第11話 川屋勉、午後十時の映画祭に行く
またしてもウンコができなかった俺はバーを出た後、前方にそびえるシネコンに気づいた。
幸いにもまだ営業していた。オールナイト上映をしている。だが、フロア内のトイレはこの時間帯は閉鎖していた。トイレに行けない映画館なんて、ひどくないか。
劇場スタッフに訊ねると、入場ゲート内のトイレは使用可とのこと。そりゃ、そうだろう。俺みたいなトイレだけのために来られても、いい迷惑だ。
仕方なく、チケットを買うことにする。映画は見ないのに。
唯一、オールナイト上映をしていたのは、『午後十時の映画祭』という古い作品がラインナップされたイベント。しかも、四本立ての特別興行とのことで、入場料は一万円。高い代償だ。
入場ゲートへ行くと、現在、一本目が上映中なので、途中入場できないという。俺はゴネた。
「トイレに行くだけですから。お願いしますよ」
「しかしですね……あっ、たった今、一本目が終了しましたので、どうぞお入りください」
どうにかゲート内に入ることができた。トイレまっしぐら。
しかし、男子トイレには長蛇の列ができていた。しかも、年配女性ばかり。女子トイレが混んでいるから、こちらに来たようだ。これがうわさの『今だけ男おばちゃん』か!
俺はいらだちながらも列に並んだ。長い。列も時間も。女性はトイレが長すぎる。
そうこうしているうちに、二本目の上映開始ブザーが鳴った。おばちゃんたちはヌーの大移動のごとく、一斉に客席へ向かい始めた。その怒涛の勢いに俺は抗えず、巻き込まれながら客席へとなだれ込んだ。
スクリーンでは予告編が流れていた。
『ファック・トゥ・ザ・フューチャー』
オナニー中にタイムスリップしてしまった高校生が行き着いた先は、高校生時代の両親がセックスしている真っただ中だった!
『処女のイズミ』
女子高生イズミの処女を強姦した男たちを探し求めて、復讐の鬼と化した父親が暗黒街をさまよう!
『ペニスに死す』
たとえ疫病で命が果てようとも、私はあの美少年をストーカーし続ける!
『ドライビング・ミス・クレイジー』
ボケて暴れる婆さんの送り迎えを命懸けで遂行する、超高齢ドライバー!
『羊たちのチンポコ』
動物の性器を食べたために終身刑になった男が、新たな事件のために、女羊飼いの依頼で過去の事件を再現してみせる!
『大統領の陰毛』
合衆国大統領のスクープ写真を撮るために、二人の記者がホワイトハウスのバスルームに隠しカメラを仕かける!
『ザーメン故郷に帰る』
故郷の田舎町へ舞い戻ってきたAV女優が家族や同窓生を巻き込んで、ひと暴れ!
(続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。