第4話 川屋勉の恥じらい

 便意をもよおしている俺は、次のトイレを探した。ちょうどデパートの斜め向かいに、ファーストフードのお店がまだ営業中だった。

「いらっしゃいませ」

 カウンターの女性スタッフが笑顔で迎えてくれる。

「トイレを貸してくれませんか」

「SサイズとLサイズがございますが」

 分かっているよ。買うから、先にトイレに行かせてくれ。もちろん今の俺は、Lサイズだ。


 二階のフロアへ上がり、片隅にあるトイレへ急いだ。

 またしても、清掃中のプレートがある。だが、もはやお構いなしだ。

 中で清掃していたのは、スタッフの制服を着た女性だった。金髪ギャル。コスチュームがパツパツで、スカートの丈も短く、妙に艶めかしい。コスプレだよな、これ。

「ご迷惑をおかけしておりますが、どうぞお使いください」

 ギャルのくせに、やけに丁寧な言葉づかい。ギャップ萌えしそうだ。それに化粧は濃いが、童顔で可愛いぞ。

「Lサイズ……つまり、こっちなんですけど」

 俺は戸惑いながら、個室を指差した。

「ええ、お構いなく」

 美少女ギャルは平然とモップかけを続けている。

「平気ですから、どうぞ、ごゆっくり」

 いや、俺が気になるんだよ。


 結局、俺はできなかった。薄いドア一枚、上下筒抜けの環境で、ブリブリと奏でる勇気はない。

 とぼとぼと繁華街の夜道を歩いた。すでにほとんどの店が営業終了している。

「おかしい……絶対に、おかしい」

 俺は釈然としなかった。若い女子だけじゃない。掃除のおばさんだってそうだ。あれだって一応は女だからな。一応は失礼か。

 その女性たちが、どうして男子トイレの掃除をしてるのだ? 逆の場合を考えてみろ。女子トイレで俺が掃除をしていたとする。男がいる中で、女たちは用を足せるか?

 あきらかに性差別だ。女はすぐに差別差別とわめきたてるけど、よく考えてみると、男だって差別されているぞ。たとえば、映画館の女性サービスデー。女だけ安いなんて、ずるいじゃないか。

 女性専用車両。俺は痴漢に間違われないかと、いつもヒヤヒヤして、両手を上げた状態で乗っている。

 それにそう、女子校だって……。


                (続く)

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