星のたまご
妻と娘に合流するジャンゴさん、引き続き護衛を任せたディルと娘たちを乗せた船が、再び町へ引き返すのを見送る。
僕はお師匠さまを乗せて飛んで帰る。中天にかかる月を彩るように星がきらめいている。
帰った後のことは置いといて、気ままに空を飛ぶのは楽しい。風の音と、背中のお師匠さまの体温を感じていると、彼女の声が聞こえて来た。
「綺麗な空ね」
『そうだね』
「……昔、私のお師匠さま……ステラさまが言ってたのよ。星は空へ還った人たちの瞬きだって。もし自分が地上から居なくなっても、お前たちを見守っていますよって」
『そうなんだ』
「よく流れ星は死んだ星の最期の輝きだって言うけれど、星の命は巡りまた私たちの元へやってくるのだと思うわ」
『お師匠さまのお師匠さまも、生まれ変わって地上のどこかにいるかもしれないね』
「そうね……そうだといいわね」
珍しくしんみりしたお師匠さまの声。
以前聞いた彼女のお師匠さま・ステラが辿った最期を考えると胸が痛む。
偉大な魔女がその命を星に還す時、本当の名前を明かし、後を継ぐ者に魔力を分け与えるという。
その最期の時に邪悪な魔女が現れて力を奪って行ったのだ。幸いにも邪悪な魔女は全ての名前を聞く前に去ったが、兄妹弟子だったお師匠さまと聚合の魔法使いは、その時に深手を負ったと聞いた。
ある意味、あの邪悪な魔女の導きによって結びつけられた僕らの運命は、今日で新しい局面を迎えたのかもしれない。
彼女の遺した呪いはまだ存在するのかもしれないけど、少なくとも当面の憂いは
もしもステラさまが生まれ変わっていたとしても。まだ星々の間でこの地上を見下ろしているとしても。
どうか、これからも僕らを見守ってください。僕はお師匠さまがいれば他に何もいりません。
願うように星空を見上げれば、月の光に紛れて小さな流れ星が紺色の夜空に静かに流れて行った。
◇◇◇◇◇
七夕に寄せて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます