泉のたまご
一番点数の低い黄色の卵は比較的見つけやすい場所にある。小さな子供でも手の届く低い繁みの中や、低木の枝の上。
青はもう少し難易度が高い。木の
金ともなればもっと森の奥に分け入らないと見つからないようになっているようだ。魔法のウサギの入った卵なんて、どうやって探せばいいのか見当もつかない。
森の精霊や生き物に聞けば教えてくれるのかもしれないが、魔法やそれに関する行為は禁止だ。ほとんどの人は魔法を使えないし、精霊達と話せないからね。
それから獣人対策なのか、今の森には嗅覚を攪乱するような香りが満ちている。尤も僕はディルやマイノのように鼻が利く訳ではないので、嗅覚は当てにしていない。匂いを嗅ぎ分けるには舌を出さないといけないし、カッコ悪いから人前ではやらないようにしてる。
とはいえ、生まれ育った森の中は、広大ではあっても僕の庭のようなものだ。どこに薬草が生えていて、どこに魔獣が出るのか熟知している。違和感のある場所を探れば、そこには必ず何がしかの色の卵を見つけることが出来た。
森の中にはいくつか泉や小川の流れもあり、山裾に近い岩場には小さな滝もある。水辺や水中にも卵を隠しているのではないだろうか。
僕はそう考えて点在する泉を巡ることにした。
水辺と言えば、湖の国ヌンドガウのお姫様は元気かな。ヌンドガウは僕の両親の治める国も近く、今は同盟関係を結んでいるようだ。
継母に虐げられていた彼女と協力し合って戦った日々を懐かしく思い出す。今頃は幸せな結婚生活を送っていることだろう。
彼女はヌンドガウ王の一人娘なので、隣国の第二王子が婿入りしたという話だ。
あの王子ったら……。泉の近くの草むらに這い出てきた小さなカエルを見て、僕は少しだけ思い出し笑いをした。
悪い魔女にカエルっぽい生き物に変えられていた彼は、ぬるぬるの姿の時にさえどれだけ姫に邪険にされても決してめげなかった。でも、呪いが解けて元の姿に戻っても、王子様ではなく年配のオジサマ好みの姫には相変わらず邪険に扱われていたようだけど。
数歩歩けば一周できてしまう程の小さな泉の中に、きらりと光るものを見つける。膝まで水に浸けながら中央まで進み、小石の間に隠すようにしたそれを拾い上げる。金の卵だ。
中にウサギが入っているかどうかは後のお楽しみ。卵の水気を取って籠に入れる。すると、近くの藪がガサガサ動いて、誰かが出てくる気配がした。
大型の獣や魔獣は結界の向こう側のはずだけど……。いったい誰だろう?
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