紅のたまご
「これからゲームの説明をしまーす!」
壇上に立ったお師匠さまは街の広場に集まった皆の前で得意げに言い放った。
今回のお祭りは大掛かりになるらしい。少し前からお師匠さまは街の人達と準備をしていた。
僕も少しお手伝いしたけど、ゲーム参加者には明かせない仕掛けがあるようで、宝探しに関してはノータッチだった。
人を避けて生活していた頃に比べると、ずいぶん打ち解けたものだと思う。気まぐれだけど陽気なお師匠さまが表に出るようになって、森の様子もすっかり様変わりした。
引き籠っていたのは希少な竜種である僕が成長するまで保護する為と、悪い魔女から身を護る為、あとは本人の奇妙な気質によるものだろう。
何故かお師匠さまは周囲を畏怖させたいらしい。全然迫力ないのにね。
僕に呪いをかけた悪い魔女はお師匠さまが吹っ飛ばしてくれたし、僕も本来の姿を取り戻し、竜の姿で飛べるようになったから、もう引き籠る理由はない。
「ルールは簡単。森に隠された色付きの卵を見つけて、一番多く得点を稼いだ人が勝ち。黄色は10点、青は30点、赤は50点、そして金色は100点よ」
忙しなく壇上を動き回りながら説明するお師匠さまを幾つもの目が追う。彼女は丸い頬を上気させて、興奮したように叫んだ。
「そしてそして~!なんと!金色の卵からウサギが出てきたら10,000点!!1個で一発逆転狙いも可能!」
彼女の言葉に群衆が湧き立つ。ひとしきりその歓声に聞き入り、それが少し収まりかけた頃、お師匠さまは注意事項を話し始めた。
「ズルは駄目よ。卵には全部魔法を掛けてあるから、偽物を持って来てもすぐに分かるわ。あと、あげるのはいいけど人のものを奪ったり乱暴な事をしたら失格。飛び入り参加・リタイアもOK。バツ印のある場所から向こうへは行かないこと。魔物除けはしてあるけど、危険がないとは言えないわ」
お師匠さまは紅い髪を振り乱しながら背中を丸め、両手を前に突き出して恐ろしげな身振りをする。小さな子供たちも真剣に聞いている。
「最後に集計して、勝った人には豪華賞品!参加者全員に参加賞も用意してるからねっ。皆さん、正々堂々戦いましょう!」
これでもかと眩しい笑みを振りまくお師匠さまに、数人の男達がポーッとなってるのも見える。ちゃんと話聞こうね。ていうか、そんなに見るな。僕のお師匠さまなのに。
「さあ、ゲームの始まりよっ!!」
そう言うと、お師匠さまは両手を高々と上げた。え?ちょっと?あの指の形はっ!?
「待って!おししょーさ……」
慌てて止めに入る暇もなく、鳴らした指がスカッと空を切ったお師匠さまの頭上で、ボン!と、爆発が起こった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます