中等部

 中等部に上がった陽菜ひな

 一年生の秋。初めての生徒会長選挙で、推薦され当選。以来、二年間生徒会長を務めた。

 中等部における生徒会長の位置付けは、スクールカーストの頂点に君臨する、高嶺たかねの花。

 生徒会長就任後、陽菜ひなに対する直接的な妬みや批判の声は、ピタリと止んだ。けれど、陰で言われるようになった。誰が言っているのかわからない状態で、言われている内容だけが伝わってくる。


 唯一、面と向かって張り合ってくるのは、上級生の早川はやかわ伊織いおり。生徒会長選挙で陽菜ひなに敗北し、副生徒会長となった。

 進学校なこともあり、選民意識の高い生徒が多い。彼女たちは、自分よりも劣ると認識した人間に対し、傲慢で威圧的な態度を取る。その中でも、早川はやかわのそれは際立っている。


 早川はやかわは、陽菜ひなに敗れたと認めていない。任期中、ずっと陽菜ひな粗探あらさがしをしていた。

 有りもしない不正の証拠が出てくるはずはなく、早川はやかわは幾度となく捏造やデマの拡散を繰り返した。


 純粋な能力勝負では、早川はやかわ陽菜ひなに敗北する。上級生なので、学力で陽菜ひなと同じ土俵に上がることは無い。けれど、運動においては必ずしもそうではない。

 学年では分かれておらず、上限値が無い。そのため、記録で比較すると優劣が付く。


 陽菜ひなは、学力テストでは常に満点。運動に至っては、大会記録を次々と更新していると伝えられた。陽菜ひなは、抜いた記録が誰のものか、関心は無い。

 抜いた側の陽菜ひなは何とも思っていないけれど、抜かれた側の早川はやかわは、一方的に対抗心をいだいている。


 正式な競技であれば、その気持ちはわからなくもない。けれど、授業中に記録する値は、成績を付ける際の、単なる指標でしかない。そんなものに、どのような価値があるというのか。

 陽菜ひなは呆れた。


 早川はやかわは今年卒業する。一年で切れる縁。生徒会以外の接点は無い。相手をする必要は無いと判断し、適当にあしらい続けた。

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