夏休み
今日から夏休み。
したいことも、予定も無い長期休暇は苦痛。スマホで適当な動画を見て、時間を潰すだけの日々がひたすら続く――想像するだけで
(刺激が欲しいわ……誰でも良いから、私を連れ出してくれないかしら)
自己中心的な願望。
見てもいないのに、動画を垂れ流しているスマホが突然鳴り響く。発信者名の表示は〝ひなまつり〟。
(この表示は何? 今は三月じゃないわよ……)
「はい」
詐欺電話かもしれないから、余計な情報を伝えないよう応答だけした。怪しいと思ったのだから出なければ良いのに、気になって出てしまった。
『明日、海
特徴的な声と、関西弁。動画サイトのオススメに出てきて以来、よく聞いている声。
(同級生の<ひなさん>だわ。掛ける相手を間違えたのね……)
成り行きで、連絡先を交換したような気はする。けれど、うろ覚え。五月以降、誰とも会話していないから、入学してすぐに交換したのだと思う。
でも、会話する仲では無いし、誘われるような接点も無い。
「掛ける相手、間違えてるわよ」
『間違えてへんよ。勇気出して掛けた』
同級生と一緒に出掛けることは、
「……何時に、どこへ行けばいいかしら」
『朝九時。
「じゃあ、また明日」
通話が切れる。
同級生と出掛けるのは初めて。
母親に報告し、許可を得なければならない。
「明日、海へ行こうと誘われました」
「誰と行くの?」
「同級生の<ひなさん>です」
「<ひなさん>との仲、良好なのね」
「接点は多くありませんが、先程、電話が掛かってきました」
「これから一緒に過ごすことになるから、仲を深めておきなさい」
母親が交友関係を否定しないのは初めて。
説得する必要があると思っていたから、拍子抜けした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。