夏休み
今日も
同級生のツレは未だにゼロ。五月までの一カ月、常に
(地元のツレに、こっちのツレと撮った写真、送って言われたけど、どないしよう……)
垢抜けた印象にしとうて、思い切って明るい金髪に染めた。雑誌や動画を参考にして、メイクの練習もした。一緒に写ってくれる人さえおったら、写真送れるのに――。
落ち込んどってもしゃあない。なんしか配信することにした。
「暇やあ」
「おらん。おったら配信してへん」
「ぎょうさんおるな。<文字列>は、独り占め出来んくてもええの?」
「今遊んどるやろ」
「明日から夏休みなのに、予定あれへん。どないしよ」
「うち、ツレおれへん……」
「女子高やし、顔面は関係あれへん思う。うち、性格悪いんやろか」
「相変わらず<文字列>やかましいな。うちが同級生やったら避ける?」
「ミュートしてへんよ」
「電話するのはええけど、心の準備出来てへんさかい、明日でええ?」
「ほな、今日は
夏休み初日。朝から配信を始める。
同級生と遊ぶ約束を取り付けることが目標。電話帳の上から順に発信していく。
出てくれへんのは、ダメージあれへん。相手
同級生は出身中学校で、トップの成績やった子ばっかり。そないな子らが集まったら、誰かはベベになる――それが
(べべの相手してもメリットあれへんさかい、断られるのはしゃあない。そやけど、頭でわかってるのと、受け入れられるんは別。納得出来たら苦労しぃひん)
「全滅や……泣きたい。配信切ってええ?」
着信音が鳴る。
「うっさい。今しゃべりたない」
着信音が止まらない。
「たいがいにしたってや! 話すことあれへん言うとるやん」
クリックしたタイミングが悪く、誤って出てしもた。
『友達、本当に居ないんですか?』
「全員に断られたの見とったやろ」
『さっきので本当に全員ですか?』
「あと一人おるけど……絶対無理やで。うちが一方的に憧れてる人。話したことあれへん」
掛けてへんのは、絶対にあかんとわかりきっとるさかい、飛ばした
『誘ってみましょう!』
目で追いきれへん速度でコメントが流れる。
「憧れてる人に拒絶された後、平気でおれると思う?」
『連絡先を教えてくれてるのだから、良い返事をもらえる可能性はゼロじゃない。その可能性を捨てるんですか?』
「接点、ほんまにあれへんさかい、知り合いに誘われたことにしてもええ? アンケートで決めよ」
OKが99%。ほとんどの
<文字列>に後押ししてもろて、電話する覚悟を決める。
「明日、海
テンパってしもて、今までで一番雑な誘い方をしてしもた――今更後悔してもしゃあないけど、悔やむ。
返答は案の定――みんなの予測を裏切り、まさかのOK。
知り合いに誘われたなんて、見栄を張ったことを悔やむ。普通に誘えとったら、ツレになれたかもしれへん。
「朝九時。
頭が真っ白になって、それだけ伝えて電話を切ってしもた。
コメント欄に、祝福メッセージが溢れる。
「うち、誰にも誘われてへん! 明日、どないしよう!?」
『
「通話繋いだままやったな。ほんまに!?」
「<文字列>は、うちが嫌がることするん? <文字列>のこと信じん
「ならええやん。ツレ呼べる? 男女二人で出掛けるとこに呼ぶのおかしい。付きお
『呼べますよ』
「一つだけ約束して。呼んだ子が、嫌がることだけはせんといて。約束出来る?」
『もちろん! 嫌がることなんてしませんよ』
「信じる。うち、撮影するもの持ってかへんさかい、代わりに撮ったって。配信するためにさそた思われたない」
【
配信画面の上部に案内文を載せる。
『俺に撮影を任せると、顔を映しますよ?』
「かめへんよ。顔知らへんと、待ち合わせできへんし映すわ」
カメラのレンズを顔に向ける。
コメント欄が荒れ狂う。
「文字列やかましい。隠してへん。見せろ言われへんさかい、興味無いと思うとった」
「さそてくれなんだやん。どんくさいやつ嫌。困ってるとき、助けてくれる人を頼りたい」
「次あったら、さそてみればええ。明日の準備したいさかい、配信
「一分後に配信切るさかい、それまでに要望
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