第27話 アルコール中毒

 いっそ以前のように薬でも混ぜられて,何もかも分からないうちに終わっているほうがましだ。だが,もう慰安夫契約なんぞ守る義理もないから,まともに食事ごっこをするはずもなく,近頃は意識の飛ぶこともない。僕は全部有耶無耶にしておきたくて,アルコールに頼り,中毒になった。

 千代田がワインボトルを取りあげ,珍しく仕事に行くと言う。

 そうか,今日はゆっくり寝られる――嬉しく思いながら,新しいボトルを引き寄せた。コルクを抜いて飲もうとするが,なかなかコルクが抜けない。やっと抜けて1口飲めたが,また,ボトルを奪われる。新しいのを手探りで求めていると,冷たいものを頰に押しつけられる。氷を浮かべたグラスだった。

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