第24話 脅迫

 澤渉の声が響いた。

「もう何も申しません。ただ,これだけは言わせてください。薬を早くやめてください」

 懸命に助けを求めた。澤渉の道徳心に訴える,非難の言葉も並べたてた。しかし,足音は階上へ遠ざかり,消えてしまった。

 千代田が果てた1度目に,刹那の猫かぶりをして欺いた僕は,部屋を飛びだし,階段をのぼり,キッチンまでは逃れられたが,再び捕まり,シンクの上に叩きつけられた。

 本当に殺されてしまうのだと思った。果物ナイフを人の喉に突きつけ,奴は涙をぼろぼろこぼした。

「けがなんてさせたくないから言うんだよ。俺を捨てるなら全部喋ってやるからな――おまえの妹に」

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