第21話 暴走発言
「やめてくれ! もうかかわりたない。すぐに出ていく」
「あまりに性急だ。自分勝手だと思われませんか」
「自分勝手? どうとでも言うたらええ。とにかくやめたいんよ」
「何がご不満なんです」
「不満? そんなん全部に決まっとるやんか」
「全部? そんな言い方,失礼じゃありませんか。ご自分で望まれて,いらしたんですよ」
「まともな仕事やと思ったけんよ」
「でも,合意して契約を結ばれた」
「覚えてない!」
「そんな無責任な!――先生をあんな体たらくにしておいて,飽きたら知らんぷりですか。分かってますか。あなたのせいなんですよ,先生が怠惰になったのは。議員仲間との勉強会に出なくなるわ,支持者との親睦会もキャンセルするわで,随分お偉くなったものだと評判もがた落ちだ。おまけに今日と来たら国会にまで遅刻した。先生はね,あなたのことで頭がいっぱいなんだ。それで,仕事に打ちこめない。どう責任をとってくれるんだ,先生をおかしくして!」
「あいつの頭のおかしさは元々じゃろうが。難儀しとる失業者を捕まえて,売春生活させよって」
「売春なんて人聞きの悪い。合意のもとに――」
「何が,合意のもとじゃ。合意なんかじゃないわい。薬よ――僕は薬を飲まされたんよ」
「薬? 薬だって?!」
「ほうよ。あれはハーブじゃろ? 掃除のときに,あいつの机の下に落ちとるんを見たんじゃけん。大方,食事のときにでも,お皿のどれかに盛られよるんじゃろ。ほれで,訳の分からんようになっとるうちに,好き放題されてしまう。ほやないと誰があんなオカマとなんか――気持ち悪いわい!」
「口を慎め」
押し殺した声で,厳しく制止された。
「本当のことじゃろうが――何遍でも言うちゃらい。気持ち悪い! 汚らわしい! ぞんぞんするわい!」
澤渉が青褪めて廊下の奥を見つめていた。
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