第9話 自意識過剰人間

「彼は今日で解雇のはずだ」

 オールバックが言った。

「ええ,それはそうですが……」

「要するに,この求人は有効だ」

 動揺する長髪を尻目にオールバックは住まいを尋ねた。出身地を告げるなり,オールバックはいたく喜ぶ。

 同郷人だ。縁がある。すごい偶然だ。いや,偶然じゃないのかな。七七七しちさんデパートで会ったのもそうだ。講演があると調べて追っかけてきたとかね。トイレにいたのも待ち伏せしてたんだぜ――とかなんとか憶測をして自分勝手に盛りあがっている。自意識過剰な人間もいたものだ。

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