第8話 期限ぎれの求人広告

 思わず後退りした拍子に,小脇にかかえた雑誌を落とした。

 オールバックが車をおりて,雑誌を拾う。

「へえ,求人広告かい? どんな仕事を希望してるの」

「割のいい,夜のバイトか」

 長髪が雑誌を覗きこむ。

 あれっと2人は顔を見あわせ,意味ありげな目つきをした。

「……まさか,家事手伝い希望か」

 長髪はそう訊いたものの,返事を待たずにせせら笑って,3月初旬に出した求人であることを指摘した。

「1箇月以上も過ぎてるんだぞ。とっくに決まってるって考えないのか。ああ,残念だね。とっくの昔に決まってる」

 この2人に関係する求人であることが知れた。とっくの昔に決まっていて幸運だった。あんたたちにかかわらないで済んだから。

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