第26話 悪魔はそばに

「何が起きたの?」

 目の前で、不思議な光景が起きています。突然、ホープが死にました。

 体から、何かが抜け出しています。怨霊の様な、不気味なエネルギーが、幾つも抜け出しています。

「リフレクトが発動。時間停止ですか…」

 保険を掛けておいて正解でした。以前、魔石を捧げた時、反射のスキルリフレクトを貰いました。ただ、効果は弱いので、限定条件を付けました。時間が停止した状態の攻撃を、完全に反射すると言うもの。

 異世界だけでなく、異能バトル系全般で、危険なスキルの一つ時間停止。

 時空魔法で、加速減速は何とか出来るだけの力を得ています。ただ、時間停止は脅威です。

 早めに対策出来て、良かったと思っています。

「何が起きたの?」

「保険が発動しただけだよ」

 ソフィーの問いに、そう答えます。ハープは、しなしなのミイラ見たになって、やがて塵取りなって消えました。その後には、大量の魔石みたいな物があります。

「これは?」

 拾い上げると、不思議な感触。

「スキル結晶?」

 それが何か、理解できました。これは、ホープが殺して奪った人の命の欠片。このままでは使えないけど、強力なスキルを習得できる可能性があります。

「何か来る」

 ソフィーが、警戒を促す。この子、迷宮で戦闘経験豊富なので、色々と持っています。

「街の中の転移、禁止されてるよね?」

「問答無用で、切り捨てても罪には取られません」

「了解。サキヨミを、拘束していて」

「手加減は、出来ない」

「場合によっては、ぎゅっとして、ごきゃっとなっても仕方なし」

 色々と、この子も怪しい。

 次々と、部屋の中に転移してくる存在があります。

「我々は」

 何か言い掛けますが、その前に首を刎ねます。今、ここに、このタイミングで来ると言う事は、目的はスキル結晶。

 ここに、これが出現する事を、事前に知っていた存在がいる。誰かが、その流れを作っていた。

 それは誰か?

「サキヨミ様…」

 転がっている首を見て、サフィーが言います。

「人形とは、趣味が悪い」

 切り捨てた存在からは、血が出ていません。似た様な存在が、次々と現れます。

 転移は、事前に予兆があります。空間の乱れを見て、その場所に刀を突き刺します。

 時々、血飛沫が上がり、人形以外の存在も混ざっていたみたいです。

 先代サキヨミとは違う人形。もしくは、そのオリジナル。

 襲撃は、数分で終わりました。相手は、全滅。

「ここまで、読めた出来どとでした?」

サフィーに抑えられているサキヨミに、声をかけます。

「ば、馬鹿な、こんな事はあり得ない。お前は、何をしたのか分かっているのか!」

 今までのサキヨミとは、別人の声。

「サキちゃんを、どうしたの?」

「元々、あれは人形。私の為の器。延命の予備人間、こんな形で役に立つとは思わなかったげど、作った甲斐があると言うものよ」

「今までに、サキちゃん死んだの?」

 サフィーは、ギリギリ限界まで、締め付けます。ミシミシと、体が軋んでいます。

「オリジナルたる私が、ここにいる。予備生命体など、必要ない」

「私は、何だったのですか」

 サキヨミの声が聞こえます。

「な、なぜお前がここにいる?」

 切り捨てた死体の中から、立ち上がる存在。人形に紛れていたオリジナルのサキヨミ。人形の数は合計で100体。人間の死体は4体。

 死者復活は出来ませんが、ポーションで死体を綺麗な状態にする事はできます。

 試してみたら、先代サキヨミの死体に、消えるはずのサキヨミの意識を移すことができました。

 40代後半で、もの凄く美人さんです。

「異世界は、色々と不思議ですね。こう言うこともあって、面白い」

「それは、私の体だ、返せ!」

「若い体の方が、良くない?」

「このままでは、化け物に絞め殺される。返せ!」

「化け物なんて、失礼ね」

 そのまま、サフィーはごきゅりと締める。

「サフィー様に、締め付けられるなんて、羨ましい…」

 そう呟いた後、先代サキヨミは倒れます。

「オリジナルの方が、権限が強い。お前たちは、愚かだよ」

 魂は、そちらに移動したみたいです。

「魂の移動、何度もできるの?」

「一度移動したコピーには、まだ出来ない。だけど、これがあれば私達は不死身の存在になれる。なれるはずだった!」

 先代サキヨミは、発狂しています。どうやら、このスキル結晶を手に入れることが目的だったみたいです。

 ホープの時間操作が問題で、勝てない未来を見ていた。

 ホープが死ぬ未来を見つけて、そこまで導いた。

「もう、無理なの?」

「お前が、仲間を殺した。7英雄を殺したんだぞ!」

「この中に、7英雄がいたんだ…」

 転移してきた集団の中に、重要なスキルを持った人間がいたみたいです。

「何度も、絶望の未来を見てきた。今度こそ、明るい未来に為、解放される手前まで来たのにっ!」

 悲痛な叫び。

「ここで、殺すのは簡単だけど、殺さない。その方が、あなたが苦しむ見たいですからね」

 先代サキヨミを拘束します。

 壊れた人形は、一纏めにして収納リングに入れます。箱に入れておけば、消費する枠は一つ。便利なものです。

 死んでいるのは、7英雄は4人。半分近くが死ぬと言う未来は確定したみたいです。

「私は、しあわせですぅ…」

 ぐにゃっとなったけど、ポーションで回復。魂の移動、予備人間扱いのサキヨミは簡単に出来るみたいです。元の体に戻ってふにゃりとしています。

 色々と、面倒ごとが多いけど、、気の抜けた子を見て力が抜けます。少し、休みましょう。

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