第22話 7英雄の後継者 その3

「傷物にされた責任を取るべし」

「傷跡は、綺麗さっぱり残ってないよね?」

「つるつるすべすべの、綺麗な体に元通り。古傷も消えてた」

「傷は勲章で、残したかった?」

「大丈夫。思い入れは、特にない。つやつやして、なんか嬉しい。見たい?」

「見たいと言ったら、見せてって、脱がなくて良いです」

 冗談で、言うつもりだったのに、途中で脱ぎだしたので慌てて止めた。横にいる、サキヨミの視線が怖い。

「貧相だから、見たくない?」

「そう言うことではないです。怪我が治っているのは、自分の体験で知っています」

 そのポーション、何度も使っています。

「ケイオス君も、すべすべつやつや?」

「師匠との修行の傷、最後は記念に残していました。傷だらけですよ」

「狡い。私も、傷残して欲しかった」

「綺麗な方が、良いと思いますよ」

「なら、そうする」

「傷が無いなら、責任は取らなくても良いですよね?」

「心に深い傷を負いました。その責任を取るべし」

「それは、自業自得です」

僕に挑まなければ、無傷で終わった話です。

「ドラグーンが壊れてなければ、もう少し上手くできたのに…」

 迷宮から戻り、対魔ギルドで反省会。

 持っていたポーションで、サフィーの傷は回復しています。ポーションの出現率が上昇したので、数が増えすぎました。それを、アイテム合成で減らしたら、効果が高いポーションが出来てしまいました。

 師匠との修行中、似た事をやったりやられたので、ついやってしまいました。やり過ぎだと、少しだけ反省しています。

「ドラグーンとは?」

「私専用の武器。戦闘強化装甲の試作機で、この前壊れた」

「壊したでしょう。剛力になってすぐだから、仕方ないけど…」

「見せてもらえます?」

「これ」

 収納リングを持っているみたいです。そこから、大きな鎧を取り出しました。ひしゃげて、壊れています。どうやったら、こうなるのか、理不尽な壊れ方。

「これは、パワーアーマーですか?」

 壊れていても、解析は使えます。魔力を通すと、動きをアシストする鎧みたいです。いろいろな技術が使われていて参考になります。

「ドラグーンを装備していたから、Dと呼ばれていたの?」

「これ、装備すると別人ですから、皇女ということ隠す必要あるので、そう名乗っていました」

「7英雄を目指しているの?」

「お母さんの、仇を討ちたいから、さふぃ様に手伝ってもらっていました」

「上手くいきそう?」

「私の占いだと、フレイムと戦いになって、死ぬ運命がほとんでした…」

「これ装備していても、負けるの?」

 このパワーアーマー、かなりの性能みたいです。ただ、色々と欠点もありそう。

「このドラグーン、稼働時間短く無い?」

「全力戦闘で 5分持ちません。通常戦闘だと、1時間。その都度フル整備が必要。メンテナンス費用が結構負担」

「姿を隠すと言うことは、普段はどうしているの?」

「力技で、動かした。すごく疲れる」

 思い鎧をつけて、生活しているみたいなものです。疲れても仕方ないです。

「この、制御に使っている機械は購入できる?」

「汎用の、精霊電算機ですから、少し高いですけど買えますよ」

「一つ、購入できる?」

「10万クレジット、現金で一括でお願いします」

「じゃぁ、お願い」

 収納リングから、金庫を取り出します。お金がぎっしり詰まった金庫です。

 補給には、色々と資金が必要。宝箱から出たアイテムで、不要なものを少し販売した結果、莫大なお金が手に入りました。

 貴重な解毒剤が複数手に入ったにで、オークションに出品した結果です。

 その後、命を狙われたりしましたが、返り討ちにしています。

 闇ギルドの人間と、少し人脈ができていますよ。その伝手で、人と会う約束もあります。

「私が、払うけど?」

「サフィー様のお小遣い、この前全部使ったよね?」

「まだ、百万クレジットあるはず」

「陛下が、定期預金にすると言って、持っていきました」

「そうだった」

 庶民的な、不思議な皇族にような気がします。

「少し、時間かかりますよ?」

「問題ない。あと、シクヤという人物は、敵?」

「シクヤは、お母さん殺害に一役買っているはずです。間違いなく、敵です」

「なら、殺して良い?」

「出来れば、生け捕りにして背後関係をはっきりさせたい」

「ふむ、ならそうしましょう」

 身体凶化していると、感覚が鋭くなります。このギルドの中に、異物が紛れています。光学迷彩と言うやつですね。恐ろしい技術で、気配もうまく隠しています。暗殺者だったら、怖い未来が見えてきます。なので、先に片付けます。

「動かないでもらえますか?」

 その人物を、拘束します。触れた瞬間、姿が見えるようにありました。そう言うスキルなのでしょう。

 姿を見せたのは、ナイスバディーのお姉さん。

「シクヤ…」

 サキヨミが、そう呟きます。何となく分かっていたけど、この人物がシクヤの様です。さて、どうしましょう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る