第21話 7英雄の後継者 その2
「これ、強く握っても壊れない!」
話し合った後、お互いの力を確認するために迷宮に行きました。
サキヨミの予言で、近くに新しい迷宮の出現を知りました。
この世界、迷宮の入り口が突然出現します。迷宮ギルドが管理している迷宮以外は自由に攻略して良いことになっています。
迷宮ギルドは、いち早く発見して管理するのも仕事の一つ。先代サキヨミは迷宮ギルドと協力して迷宮の発見に貢献していました。
新しい迷宮は、未知の世界。何が出るかは解りません。ただ、サキヨミのスキルでおよその事は事前にわかります。レベル20の機械の魔物の迷宮。
武器が無いと危険なので、サードに刀を貸しました。ナイトメタルの刀なので、不壊属性のおかげで強く握っても壊れる事はありません。
「前に使っていた武器、壊れちゃったから嬉しい」
「それで、戦えますか?」
「ちょっと待ってね」
刀を構え、周囲を確認。敵を発見。斬りかかります。四つ足の、動く砲台。怠惰の迷宮周辺は、似た魔物が出現する傾向がある。
「凄い、サクッと斬れた」
切れ味抜群。これなら…。
「因みに、僕が着ている鎧は、同じ素材だから斬れないよ」
迷宮に入る時は、完全武装が基本です。
サードの目が、こちらを見ています。あれは、獲物を見つけた瞳です。師匠と同じ匂いを感じます。人を試す時の雰囲気。
「敵対するなら、容赦はしませんよ」
「敵には、なりたく無い。でも、全力で戦いたい」
うずうずと、我慢できない子供がいます。
「では、本当の名前を教えてください」
「サフィー・ドラゴン・ソード」
やっぱり、この子が謎の剣士Dでした。王族に連なるのでは無く、この名前は確か第八皇女です。
「サキヨミは、知っていたのかな?」
「サフィー様のお目付役です。騙すような事をして、申し訳ありません」
「何か、騙した?」
隠していたのは、事情があるなら仕方ないです。相手の身分が上なら、従うしか無いのが貴族社会。
「お母様のことは本当です。私たちが生き残るために、ケイオス様を利用しました」
「僕を利用?」
「サフィー様は、危険な存在として命を狙われています。高確率で、私たちは死ぬ運命でした」
「自分を占ったの?」
「サフィー様だけです。いつも一緒なので、死ぬ時は一緒だと思っています」
「仲良かったの?」
そんな気配は、感じませんでした。
「色々と、我慢していました。少し、と言うかかなり羨ましくて、憎らしいですよ」
にっこり笑顔が怖いです。抱きつかれたり、ぎゅっとされているからでしょう。
「ケイオス様に出会った時、運命が変わった事を感じました」
「変わった?」
「お母さんの遺言の一つです。あの場所に行けば、運命が変わる。出会った事で、選択肢が増えました」
「どう増えたのですか?」
「生き残れる可能性が上昇。サフィー様が、皇帝になる可能性も見えました」
「あの子が、皇帝?」
もう、我慢できないという感じです、こちらを見ています。戦闘狂なの?
「サフィー様、人との接触に飢えています。剣術の訓練、打ち合える人も武器もなかったので…」
「手加減とか、できそうにないね」
「それは、ケイオス君の方で、なんとかしてください」
「僕も、手加減とか上手くないんだけどね」
「女性に優しい殿方は、好感度上がりますよ」
「それ、無理。僕は、憧れた女性の師匠と殺し合った事あるからね」
刀は貸したので手元にありません。あれと同じ武器を作るには、時間がありません。色々と、武器を作ってはありますが、殺傷力が強すぎます。剛力のスキル、力が上がりますが防御力は、それほど上がりません。
魔力を見てみると、体に纏っていません。基礎的な戦闘技術、低いですね。力任せに、武器を振り回す。それで何とかなっていたみたいです。
「色々と、未熟!」
頼れるのは、己の肉体のみ。
身体凶化、最大発動。
世界の色が、変わります。
「消えっ」
サフィーには、その動きが見えなかった。
ケイオスの髪が、銀色に光ったと思った瞬間、姿が消えた。
危険を感じて、行動を移そうとした瞬間、背後に気配。
「気付いただけ、少し丸をあげましょう」
そう言われた瞬間、ものすごい衝撃が襲いました。体が、バラバラになりそうな衝撃。
実際、背中に穴が空いています。手刀が、背中を貫いて、胸から手が生えています。
「人間、丈夫だから、ギリギリ急所を外してあれば大丈夫」
これ、大丈夫じゃない。ケイオス君も、色々と狂っています。
「これなら、避けられないよね」
体に、ぐっと力を入れて、手を抜けられないようにします。無駄かもしれないけど、今はこれしか出来ない。そして、刀を自分に突き刺します。
「間違ってはいないけど、やるとは思いませんでした。ただ、未熟」
刀は、ケイオス君には当たっていません。突き刺された手、籠手だけで中身はありませんでした。既に背後にはいなく、いつの間にか正面にいます。
「今後に、期待しましょう。僕の訓練は厳しいですよ」
これからも、一緒にいられる。そう言う事。そごく嬉しい。痛いけど。
「このポーションで、あっっと言う間に回復です」
気を失って倒れたサフィー様に、ケイオス君はポーションを振りかけました。
あっという間に、回復します。私が見た未来。サフィー様が皇帝となる隣で、何かになった輝く存在がいる。
もしくは、大勢の女の人に囲まれる存在。その中の一人となって幸せそうなサフィー様と私。
どちらに未来が良いのか、今はまだ解りません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます