第19話 女神の使徒

 詳しい話をするために、対魔ギルドに戻りました。

 応接室で、話し合いです。ここに来るまで、サードがおんぶお化けになって、くっついていたのが気になります。

「この子、人と接することなかったからね…」

「仲良かったの?」

「この子、有名だったから…」

「有名?」

「将来は、姫将軍、殺戮姫のサって、サード。あの歳で、迷宮攻略数も同年代で頭ひとつ飛び抜けた存在。ただ、みんな怪力だから恐れていました」

「怪力で?」

「小さい頃は、コントロール出来ずに、色々と破壊したのよ。魔物の頭を、プッチと潰すのを見た仲間は、恐怖を感じたそうよ」

「それでも、頑張っていたんだよね?」

「そうね。何もしなかった私達は、酷い存在よ。何が英雄よ…」

「英雄は、嫌いかな?」

「大っ嫌い」

「サキヨミは、七英雄の一人の名前だよね?」

 ソード帝国の七英雄。大罪の迷宮に一人ずつ、割り当てられた存在がそう呼ばれています。

「私のお母さんが先代の七英雄。先日、自殺したから、私が襲名した」

「英雄が、自殺?」

「公式発表は、自殺。お母さん、こうなること予言して、色々と準備していました」

「未来視?」

「私の家は、その系統のスキルが発言し易いの」

「そのスキルがあるなら、自殺する必要ある?」

「本当は、仲間に殺された。でも、お母さんはそれを受け入れた」

「もしかして、ここがこうなったら原因?」

「七英雄は、定期的にお母さんに占いを頼んでいました。自分たちの敵は、どこのいるかと。お母さんがある日、七英雄の半分が殺される未来を占いました」

「原因が対魔ギルドだと?」

「この場所まで、占い結果に出てました。それを知った誰かが、ここを襲ったみたいです」

「犯人は、わからないの?」

「私の能力では、無理です。お母さんの遺言は、そのことに触れていません、私の身を守るためだと思います」

「それなのに、退魔ギルドに来ても良いの?」

「ここには、友達いたの…。みんな、殺された、許せない」

「敵討ち?」

「出来るなら、私の手で…。でも、私には出来ない。出来そうな子がいたから、利用するつもりだった」

「それが、サード?」

「うん」

 ひっつき虫になっているサードを見ながら、サキヨミは呟く。

「この子、利用する価値はない。悪いのは、私の一族。私一人で、あとは戦います。ケイオス君なら、この子の面倒見れるよね?」

「ここが、こうなった原因、君の一族にあるなら、君も敵ですよ」

 刀を取り出し、喉元に突きつけます。

「私一人の命で、事は足りますか?」

「足りるわけが無い。地獄送りもで、不足。マイナス分は、働いて返してもらいます」

「こんあ、貧相な体では、殿方は満足しませんよ。売り飛ばしても、二束三文」

「なんで、売る前提ですか。僕が、利用します」

「お子様なのに、ませてるのね」

「君も、充分お子様ですよ」

「そう言う趣味なら、サードには絶対に手を出してはダメですよ」

「剛力の伝説、さっきも聞いたけど、本当?」

「酷い話ですよ」


 剛力の伝説。

 戦で功績を上げ、貴族に召し抱えられた女の子。剛力と言う、レアなスキルを所持して、強力な巨大な剣を振りまわした戦乙女。

 王族の目に留まり、王子と結婚する事になりました。

 元平民に、断れることもなく結婚。その初夜に悲劇が起こる。

 王子と言っても、貧弱な坊や。

 元平民で、戦いに明け暮れていた少女。

 王子は、色々と経験豊富で手慣れたもの。一方、少女初めてで、戸惑うことばかり。結果、悲劇が起こる。

 きゅっとしまったはずみで、中にあったものをごきゅっと潰してしまった。

 日々の訓練で、日常生活を送る分には、力を抑えれた。

 だけど、初めての事で、今まで使っていない部分のコントロールはできなかった。その結果、王子は、何かを失った。失ってはいけない部分を、根本からごきゅうと、失った。

 なぜか、魔法による治療は出来なかった。逆上して、少女を殺した事で、女神の呪いを受けたのだ。これ以降、この世界に戦いの女神の加護はない。

 

「恐ろしい、出来事ですけど、今の僕なら彼女より強いので問題ないですよ」

「手を出すつもりなの?」

「そう言う意味では、今は無い。僕にも、色々とやることが多いですからね。その為に、君たちの力を借りたい」

「ケイオス君は、自信が色々とありそうだけど、その根拠は何?」

「自信はないよ、日々恐怖との戦い。でも、この場所に売られた戦争は、僕の使命だから」

 そう言いながら、手の甲を彼女に見せます。そして、魔力をなすことで浮かび上がる紋章。

「混沌の女神の使徒様?」

「見習いだけどね、ケイオス・ナイト。混沌の女神の使徒見習です。よろしく」

「よ、よろしくお願いします」

 手を差し出すと、つられて握手をしてくる。

「ずるい、私も!」

「混沌の女神の願いにより、ソード帝国7英雄を抹殺します。協力、お願いしても良いですか?」

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