第15話 帝国まで…

 現在僕は、ソード帝国の国境の街にいます。迷宮都市から抜け出して5年。何とか到着しました。

 道中、色々ありましたが生き残れました。

 ソード帝国には、機械の魔物が出る迷宮があるのが有名です。とても楽しみです。


 ここまでは、迷宮を、何箇所か攻略してきました。

 大陸鉄道があるので、ここに来るだけなら路銀さえあればすぐに来れました。

 修行を兼ね、歩いて旅をしました。

 スキルは、できるだけ増やさず、一つ一つを高める方向でやっています。少し増えましたが、大きく変化はしていません。

 個人レベルは、1000まで行きました。これ以上はないみたいです。ただ、能力を個別に伸ばせるみたいなので、レベル外の成長の余地はまだまだあります。

 途中で、巨大な未発見の迷宮に迷い込んだ事があります。これが原因で、レベルが上限まで行きました。

 龍の迷宮と言う場所で、3メートルほどの龍がいました。

 最初は、一撃で首を刎ねて終わりでした。

 すぐに復活して、文句を言ってきました。

「不意打ちとは、卑怯なり!」

 意外なことに、女性の声でした。

 復活したけど、ドロップアイテムを入手していました。龍の召喚珠(小)と言うものでした。

 これは、龍を召喚してテイムできるアイテムで、珍しい秘宝と判明。ここで使うと、目の前の龍は消えて配下になるそうです。

 ただ、出現率はものすごく低いそうです。小でも、1%の確率です。でも、僕なら何度もで小なら手に入れられます。

 挑戦は、1日一度だけ。

 この龍は、迷宮に封印されている存在でした。世界を色々と渡り歩き、疲れて休んでいたらこの迷宮に閉じ込められたそうです。

「休み過ぎて、体が鈍っているのだ。次は、簡単に行くと思うなよ」

 と言うことなので、翌日再戦。

 僕の勝ちでした。召喚珠が二つになりました。

 2匹の龍が呼べるのかと聞いてみると、それは無理と言われました。

 一つ使えば、一つ消える。アイテム合成があるので、100個集めたらどうなるか、気になりました。

 召喚される前に、もっと戦いたいと言うので、100日間戦い続けました。

 後半は、調子を取り戻した龍に苦戦しました。

 この龍は、魔法を使うのが上手でした。ナイトメタル製の防具でも、隙間を狙ったり、空間を切り裂く攻撃など凶悪な魔法を使ってきます。

 腕を切られたり、お腹に穴が空いたりと、何度か生死の境を彷徨いました。

 最上級のポーションを、何本か確保していたので、生き延びました。殺そうと思えば、出来たと思います。でも、この龍は僕を殺しませんでした。

 100日後、アイテム合成で召喚珠を合成。


 龍の召喚珠(小)➕


 変化は、思ったよりありません。中になると思ったのですが、残念な気持ちです。

「ふむ、これは後9個あればもう一つ上の存在に合成できるようだな」

 龍がそう呟きました。決まりです。

 900日間、戦い続けます。500日を超えた辺りから、龍は人型になりました。こちらに合わせて、同じ感じの少女になってくれました。最初に見たすがたが、美人のお姉さんでした。今は、可愛らしい少女です。

 ただ、強さは本物。

 みっちりと、修行をつけてもらった感じです。終盤は、師匠と崇めていました。

「師匠と敬うなら、もっと優しくして欲しい」

「そんな事をしたら、殺されます」

「ギリギリ、殺さないので安心せい」

「その辺は、信頼しています」

 そんなやりとりをして、最初から1000日過ぎました。

 集めた召喚珠を合成します。


 龍の召喚珠(小)極


 と変化しました。小のままなのが何ぞです。



「良くぞ試練に耐えました」

 召喚直前、龍が語りかけてきます。

「ここでお別れです」

「え?」

 召喚したら、この子が出現すると思っていました。

「私は、既に滅んだ存在。この世界の、迷宮にいる魔物は、皆同じだと思ってください」

「嫌だ、貴方と一緒に行きたい」

「君は、まだ生きています。私と一緒と言うのは、死ぬと言う事です」

「今、一緒にいるじゃないですか!」

「迷宮の外に出たら、私は消滅します」

「…」

「最後の時を、君と過ごせて、楽しかった」

「…」

「召喚した龍は、私の産むことのできなかった娘です。よろしくお願いします」

「嫌だ、一緒にいたい」

 ここで過ごした時間は、濃厚で楽しかった。戦い終わり、次に挑戦できるまでの時間、色々と教えてもらった。楽しかった。

「外の世界で、君を待っている存在がいます」

「待っている?」

「正直に言います。この世界は、崩壊寸前です。誰かが、力ある誰かが必要です」

「僕は、貴方と一緒にいたかった」

「私もですよ。でも、理解はしていますよね?」

「僕が、もっと馬鹿だったら良かった…」

 色々と理解しています。既に、過去形。一緒には居られない。


「最後は、笑ってお別れしましょう」


 それが、彼女の最後の言葉。

 召喚珠は、まだ使っていません。

 背中のカバンに、入れてあります。大切なものです。

 

 入国は、問題なく出来ました。対魔ギルドという組織に所属しています。

 混沌の女神は、英雄殺しではありますが、魔物と戦うものを支援するという側面もあります。邪神扱いされず、対魔という部分で支持する信者も存在します。

 各地に、小さな教会があります。

 当面は、そこでお世話になるつもりです。そこに、向かいましょう。

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