第28話 シルヴァス局長(7)
「だから、その、なんとかの山っていうのに増援を送るのはやめて、いや、サパレスも呼び戻してですね!」
「じゃあ、おまえ」
と局長は落ち着き払って言い返す。
「サパレスとちゃんと連携して戦えるか?」
「あ、いや、それは……」
無理だろう。
カスティリナはサパレスが苦手だし、サパレスもカスティリナをばかにしている。
いっしょにいるのでさえ気詰まりなのに、「連携」なんてできるはずもない。
局長はひとつ息をつく。
「それに、そっちはそっちで盗賊の本拠かも知れないわけだろう? そっちを投げ出すわけにもいかんだろうて」
「ああ」
そういえば、そのことを忘れていた。
うまく行けば、その「
「そうですね」
ただ、あの盗賊団を中途半端にやっつけただけでは、あのラヴィは助けられない。生き残った連中はまちがいなくラヴィを殺す。
もしサパレスが盗賊団をやっつけきれなかったとしたら、そのときは自分がラヴィを助けに行こうとカスティリナは心を決める。
シルヴァス局長は、そんなカスティリナの思いとは関係なく話を続ける。
「内情が洩れてるかも知れないので、ダンツィク商会には金貨銀貨の置き場所を変えるように法務府から勧告してもらっている。まあ、ベニーの旦那からだがな。たぶんダンツィクもこの忙しいときにとか何とか文句は言うだろうが、法務府に言われて逆らう度胸はない。だから、賊が金庫に殺到しても、中はもぬけの殻ならばまだいいが、そこにはバンキット局長の指揮する傭兵どもが待ちかまえている、という寸法だ」
「では、わたしたちもそこに潜んで?」
「いや」
シルヴァス局長はきっぱり首を振る。
「奥のほうにある
眉を寄せて、局長はカスティリナに言う。
「そんなにおれといっしょがいやか?」
「いや、そうじゃなくて、です」
カスティリナもおうへいに言う。
「そんなところまで賊が来るはずないじゃないですか?」
「盗賊の勘を甘く見るんじゃない」
局長は大きく息をつきながら言った。
「たぶん、来るよ」
そして、局長は、斜め上にカスティリナを見上げて、言った。
「今日は思う存分やらせてやる。そのかわり、生きて帰れ。それだけが条件だ」
カスティリナは、ただ黙って
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