第23話 シルヴァス局長(2)
部屋に入ると、局長はおうへいそうにいいかげんに椅子に腰かけ、カスティリナを見上げていた。
扉をきちっと閉めて、しおらしく局長の前に立つと、局長は不機嫌そうに目を細めて言った。
「何をやってるんだ、おまえは」
そんなことをきかれても答えられない。
ただ生きているということから、いま局長の前に立っているということまで、いまやっていることが多すぎるから。
「今朝、法務府の分局に行ったことですか?」
「それであの娘に会って、それで黙って帰ったことだ」
「ちゃんと書記さんには伝言を残しました」
「あのなぁ」
局長は、目を閉じ、ふんと鼻を鳴らしてから、また肩をすくめてしばらく笑った。
「あのときベニーに会っていたのはおれだぞ。もう少し待ってれば、こんな行き違いにはならなかったのに」
思わず言い返す。
「そんなこと知るわけないでしょうが」
「そりゃそうだろう。無断外出だからな」
「ああ、まあ、それは」
無断外出の話はおとがめなしかと思っていたら、そうでもなかったらしい。
「すみません」
謝っておく。シルヴァス局長は大きく息をついた。
「まあ、いいが」
顔を上げ、こんどはすました顔で、局長はカスティリナに言った。
「そのかわり、あの子との話を洗いざらいきかせてくれ」
「あ、いや、その前に」
ラヴィの身の上が心配だ。
訪れて話をするまではただの盗賊団の被害者だったが、いまは、また会ってみたいと思う相手になっている。
まだ友だちとは言えないまでも。
「ラヴィ、いや、あの子の部屋をもっと安全なところに換えてくれるようお願いしておいたんですけど」
「そのことはあとで話す」
局長はまじめな顔で言った。「あとで話す」と言われて気にはなったけれど、局長に「いいえ、いまお願いします」と言える立場でもない。
「まず、ラヴィ、というんだね?」
「ああ、はい」
「じゃ、そのラヴィからきいた話、きかせてくれ」
「はい」
カスティリナは、言われたとおり、ラヴィからきいた話をていねいに局長に伝えた。
昨日は取り乱していて
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