🔳10話

 多少のトラブルはあったものの初日のチームの訓練が終わった。その後は夕食や入浴などがあって、あと少しで就寝時間となる。

 セラフィムはいつも通りミラの髪を梳かしていた。ベッドに座る彼女が上機嫌に鼻歌を口ずさんでいる。

「今日も一日充実していましたね~。これで立派な騎士に着実に一歩前進です」

「ミラは基礎訓練だけだったけどね」

「そ、それはまあそうですけど……」

 ミラががっくりと肩を落とす。

 コンコン。

 そのとき、部屋のドアがノックされる。

「……? こんな時間に誰でしょう」

「さあ」

 ふたりで首を傾げてから「はい。どうぞ」とミラが返事をする。

「やあやあ。夜分遅くごめんね~」

 ドアを開けて入ってきたのはファルケだった。就寝時間間近だというのに彼女はまだ制服を着ていた。

「せ、生徒会長!?」

「あ、ミラちゃんそのパジャマかぁいいね~」

 ケラケラ笑っているファルケから視線を外し、ミラが緊張した面持ちで肩越しに見上げてくる。

 ――『セラフィムくんにはこの町の治安維持に協力してもらいたいの』

 昨日、生徒会長室でファルケから言われたことだ。そう、つまりセラフィムの出番というわけだ。

「……わかった」

「さっすがセラフィムくん。察しが良くておねえさん助かるなぁ。そんなわけでちょっと彼貸してもらうからね」

 手早く制服へと着替える。ファルケと一緒に部屋を出ようとしたところ、その袖が弱々しく引かれた。

 ミラだ。

「あの、えっと……」

 不安そうに言葉を濁す。そんな彼女の頭をセラフィムは優しく撫でた。

「自分を責めるのは無しだよ。俺たちは一蓮托生、でしょ?」

「……はい。フィム、必ず戻ってきてくださいね」

 踵を返して部屋を後にする。

 ドアが閉まり切るまでミラは手を振って見送ってくれるのであった。

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