第31話 コボルトと盾

「チャンスだよ! ロープ!」

「はい!」


 私が格闘ジョブでモンスターを中央に寄せ、ロープに指示を出す。

 集めたモンスターは狼の怪物……コボルトの群れだ。

 奴らは一匹狼などではなく、群れを作って集団で襲い掛かってくる。

なので、中央に集めて一気に退治した方が速いのだ。

 ……これも全て、前のパーティで学んだこと、カロン達は脳死で攻撃するだけだったから、誘導するのに手間取ったっけな。

 ま、今は頗るどうでもいいことだけど。


「どりゃああああ!!」


 ロープは大きく雄叫びを上げ、コボルトの群れを一括した。

 奴らは煙となって消えていき、まるでそこに何もなかったかのようになった。

 ……だが。


「ロープ! 危ない!」

「……え?」


 私は咄嗟に、盾が描かれたカードを翳した。


『ジョブチェンジ! 盾!』


 カードを翳すと、私は屈強な鎧に身を纏い、強固な盾を2つ装備した。

 私はロープの前に立ち、コボルトの攻撃を防ぎ、盾で奴を吹っ飛ばした。


「盾は守るだけのものじゃないよ!」


 私は盾でコボルトを殴る。

 強固な盾は鈍器と同じ、奴は攻撃に耐えるのに手一杯なのか、怯みを見せている。


「じゃあこれでトドメ!」


 私は槍が描かれているカードを翳した。


『ジョブチェンジ! 槍!』


 私は屈強な鎧から軽装になり、マントを背中に巻いた姿になった。

 槍ジョブの名の通り、片手に巨大な槍を装備している……これなら何でも貫けそうだ。


「食らえ!!」


 私は倒れているコボルトに向かって、巨大な槍を突き刺す。

 すると、奴は呻き声を上げ……呻き声を上げながら消えていった。


「やりましたね! アニマさん! アニマさんが守ってくれなかったら今頃どうなっていたか……」

「いやいや、ロープがいたから奴らを一掃できたんだよ、ありがと、ロープ」

「そ、そうですか? えへへ……」


 ……喜んでいるロープは、とても無邪気でかわいい。

 私は思わず、頭を撫でてしまった。


「……じゃ、ドロップ品回収しよっか」

「はい!」


 私たちは一掃したモンスターから出たドロップ品の回収を始める。

 換金したらいくらになるかな……楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る