第25話 噴水

 こいつの弱点……一体なんだ?


「まだ足りない……水が……水が欲しいのおおおおおおおお!!」


 奴はまた奇声を発した。

 ……水。


『にしても、今日乾燥しすぎじゃない?』

『そうですね……火事とかが起きたら大変ですね』


 ……そうだ、奴を火あぶりにして、蒸発させたらいいんだ!

 でもここで火を放ったら大惨事になりそう……ならばこれだ!

 とりあえずジョブチェンジだ!

 私は魔法ジョブのカードを取り出し、スライドさせた。


『ジョブチェンジ! 魔法!』


 ローブに身を包んだ私は、早速水を思い浮かべ、スライムとは反対方向に放った。


「ほーら、お望みの水だぞ!」


 私は鳥に餌をばら撒くように、向こうの方へと水をまき散らす。

 すると、それに食いついたのか、奴はそちらの方向へと走り出した。


「水……水ううううううう!!」


 ……思った通りに動く、いいね。


「ロープ! この辺で広いところってどこ!?」

「アニマさんが水をばら撒いた方向に、噴水広間があるはずです!」

「噴水広間……いいかも!」


 そこに奴を誘導させたら、思う存分火を放てる!


「じゃ、こいつをそこまで誘導させるよ! ロープ! 案内して!」

「はい!」


 私はロープが走る方向に水をばら撒き、スライムを誘導させていった。



 ……しばらく水を放ち、ついにだだっ広い噴水広間が見えてくる。


「ほーら! あそこに沢山水があるぞ!」


 私は杖で方角を示し、奴に水の場所を伝える。


「水……水飲みたい!!」


 スライムは馬鹿正直に噴水へと飛び込んだ。

 ……よし。


「ロープ! 離れて!」

「はい!」


 私は巨大な炎をイメージし、噴水へ飛び込んだスライムに目掛けて撃った。


「く、食らえ!!」


 杖から放たれた炎は……イメージよりもかなり大きかった。

 やはり乾燥している影響で、かなりの威力だった。

 巨大な獄炎がスライムに命中し……噴水から、まるで豪雨のような水しぶきが起きた。


「きゃあああああああああ!!」


 スライムは叫び声を上げ……跡形もなく消え去った。

 辺りは豪雨になり、まるで霧のようになっていた。


「アニマさん!」


 豪雨の中、ロープがこちらに駆けてきた。


「ロープ! やったね!」

「はい!」


 私たちはチームワークを証明するかのようにハイタッチをした。

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