第6話 結成
「ふぅ……ここなら大丈夫ですね」
「あ、ありがとう、人ごみから救ってくれて……」
私は女の子に連れられ、彼女が泊まる宿の部屋へと着いた。
部屋の中には小さいベットが一つに、椅子が二脚とテーブルが一つ……最低限の設備しかない普通の部屋だ。
……と言っても、私の部屋よりかは十分豪華だけど。
「ありがとうは私のセリフです! モンスターから助けてくれてありがとうございます! 勇者様!」
なんなんだ、勇者って……。
「ねぇ、その勇者様って何?」
「はい! 私、小さい頃からずーっと勇者様に憧れているんです! 幼い頃、お婆ちゃんにしてくれた勇者様のお話を聞いてから!」
「へ、へぇー……」
勇者様のお話ねぇ、それと私が似てるってこと?
「お婆ちゃんは言ってました! 勇者様は様々なジョブになりきれる凄い方なんだって! 貴方はきっとそうなんです!」
「そ、そうかな?」
そう言われると……なんか照れる。
私が……勇者様か。
「勇者様! お願いです! 私とパーティを組んでいただけませんか?」
「ぱ、パーティ? いきなり何?」
女の子は唐突に提案をする。
いやいやいや、確かに私もパーティをクビになったわけだし? 嬉しいけどさ……うーん……。
「まずさ、貴方の名前が分からないんだけど? 私はアニマ、よろしくね」
「アニマさん! よろしくお願いします! 私は『エウロプ』と申します! 『ロープ』って呼んでください!」
「じゃ、じゃあ、よろしくね。ロープ」
「はい!」
少女……ロープは元気よく返事をした。
「で……貴方のジョブはなんなの? 私は変身だけどさ」
「変身!? どんなジョブなのですか!?」
「あ、えーっとね……動物やモンスターになりきれるジョブだよ」
「わー! 凄いです! 見せてください!」
「い、いいけど……」
この子なんかずっとテンション高いな……なんか疲れそうだ。
変身を見せて欲しいか……何が良いかな? モンスターはアレだし……そうだ!
「よっと」
私は彼女の祖先……キツネに変身した。
4つの足で体を支え、全身が体毛に覆われる。
目線も低くなり、ロープと同じ位置に来たようだった。
「わぁー! かわいいです! 凄いです!」
「あ、ありがとう……」
ロープは変身した私を見て、飛び上がるように喜ぶ。
そんなに凄いかな?
「体毛……モフモフですね」
「ちょ、ちょっと……」
ロープは変身した私の頭を撫でる。
キラキラした目で私を見つめ、変身した私に興味津々なようだった。
「あ、あんまり撫でないで……くすぐったいから……」
「あ、ご、ごめんなさい!」
ロープは無心に私の頭を撫でていた。
興味を持ってくれたのなら嬉しいけどさ……。
私は元の姿に戻り、本題に戻そうと話を振った。
「……で、貴方のジョブはなんなの?」
まず話はそれからだ、見た目的に彼女は武器を使うようなジョブではないことは分かった。
私が質問をすると、ロープは元気一杯に答えた。
「はい! 私のジョブは『格闘』です!」
「格闘……」
格闘、その名の通り、己の体力と拳だけで戦うジョブだ。
言い方悪いけど、あまりパーティに呼ばれないジョブだ、パーティをクビになった私が言うのもなんだけど。
「私、体力には自信があるんですけど……やっぱりジョブのせいでパーティを転々としていて……さっきも、人手が足りないパーティが無いかを聞きにギルドへ……」
「あーなるほどね」
つまり私と同じか、パーティをクビになって、別で雇ってくれそうなところを探す……辛いよね、そうだよね。
「ですけど! 貴方となら行ける気がします! どうか私とパーティを組んでください!」
「う、うーん……」
そうだなぁ……この子のパーティ……。
実力はよくわからないけど、ジョブが格闘なだけあって、若干ながら筋肉がついているようには見える、体力には自信があるというのは本当だろう。
あのままギルドへ行っても色んなところから勧誘が来るだろう……うーん、でも多人数と組むのはしばらく嫌だな。
……ここは……乗るか!
「……うん、わかった! じゃあ、パーティ組もうか!」
「ほ、ほんとですか!? ありがとうございます!!」
ロープは私の手を取り、握手の要領で思いっきり振り回した。
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