第5話 仲間

「す、すごい……すごいです!」


 ギルドの中から突然、茶髪にキツネの耳と尻尾をする……所謂獣人の女の子がこちらに近づいてきた。

 身軽そうな長袖の服を着ていて、青い瞳で私を見つめていた。


「貴方……もしかして……伝説の勇者様!?」

「で、伝説の……勇者?」


 何言ってんだこの子は?


「おい! アンタ! ウチのパーティに来てくれよ!」

「馬鹿野郎! 俺が先に目を付けたんだ!」

「違う! 私たちのパーティに……」


 ギルドから出てくる人が私に向かってくる! どうしよう……このままじゃ人ごみに紛れて……。


「こっちに来てください!」

「え? ちょっと……」


 私は女の子に引っ張られ、その場を後にした。



「ふぅ……ここなら大丈夫ですね」

「あ、ありがとう、人ごみから救ってくれて……」


 私は女の子に連れられ、彼女が泊まる宿の部屋へと着いた。

 部屋の中には小さいベットが一つに、椅子が二脚とテーブルが一つ……最低限の設備しかない普通の部屋だ。

 ……と言っても、私の部屋よりかは十分豪華だけど。


「ありがとうは私のセリフです! モンスターから助けてくれてありがとうございます! 勇者様!」


 なんなんだ、勇者って……。


「ねぇ、その勇者様って何?」

「はい! 私、小さい頃からずーっと勇者様に憧れているんです! 幼い頃、お婆ちゃんにしてくれた勇者様のお話を聞いてから!」

「へ、へぇー……」


 勇者様のお話ねぇ、それと私が似てるってこと?


「お婆ちゃんは言ってました! 勇者様は様々なジョブになりきれる凄い方なんだって! 貴方はきっとそうなんです!」

「そ、そうかな?」


 そう言われると……なんか照れる。

 私が……勇者様か。


「勇者様! お願いです! 私とパーティを組んでいただけませんか?」

「ぱ、パーティ? いきなり何?」


 女の子は唐突に提案をする。

 いやいやいや、確かに私もパーティをクビになったわけだし? 嬉しいけどさ……うーん……。


「まずさ、貴方の名前が分からないんだけど? 私はアニマ、よろしくね」

「アニマさん! よろしくお願いします! 私は『エウロプ』と申します! 『ロープ』って呼んでください!」

「じゃ、じゃあ、よろしくね。ロープ」

「はい!」


 少女……ロープは元気よく返事をした。

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