第35話 ナンパにご用心
俺は、あまりしっかりは選ぶことがなく直感で決めて買い物を終わらせた。
直感といっても、そんながっつりまずいものではない。
大きな花柄ではあるけれど生地自体は黒地なので目立ちにくい。
花柄も、それ単体に色がついているわけではなく同系色の糸を使っているので割と落ち着いたイメージがあった。
美咲は、どこかと探していると売り場から少し離れた辺りで女の子を囲うように二人組が、彼女を柱を背に逃げられないようにしていた。
「ねえねえ、いいだろ。俺たちと遊ぼうぜ」
ああ、典型的なナンパか。
俺は、もう最近多すぎてこの手の輩にはうんざりしていた。
「俺の嫁になんかようですか?」
といって、不本意ながらに壁ドンをしてる男の右手を取り力いっぱいに握りつぶした。
「いてぇ、なにしやがる」
「はぁ、聞いてないのかよ。
俺の嫁に何か用かと聞いている」
俺は、さらに力を加えていく。
そして、手首をつかんだまま後ろ手に無理やり関節を決める。
「美咲、悪い。待たせたな」
「幸ちゃん、ごめんなさい」
「いいよ・・・ちょっと待てて」
俺は、彼らをにらみつける。
ひとりは怯え切っていて、ひとりは痛みでもう声さえあげれずにいた。
俺は、関節を決めていた方の男を力いっぱい投げ飛ばした。
別に、こいつの腕がどうなろうと関係がない。
美咲に危害を加える奴を許さない。
「覚えてろよ」
三下みたいなセリフを吐いて、男たちは去っていた。
「はぁ」と俺は溜息を吐く。
「美咲、大丈夫だったか?」
「・・・大丈夫だよ。幸ちゃん、いつもありがとう。
でも、幸ちゃんは大丈夫?」
「俺?大丈夫だよ」
俺は、美咲の頭を撫でる。
割とこれが日常になってきてる。
困ったものだ。
まあ、男のナンパはこれで済むんだが。
女のナンパは・・・美咲が怖い。
「怖い思いさせてごめんな」
「ううん、幸ちゃんならきっと来てくれるって思ってたから」
美咲は、俺の左腕に腕を絡ませ、肩に頬を擦り合わせてきた。
彼女をなるべく一人にしちゃだめだな。
俺が付いてないと。
「この後どうしようか?」
「お昼にはまだ早いし、お散歩するとか」
「ああ、なにか面白いものとかあるかもしれないしな」
割とイオンっていろんなお店があるから掘り出し物もたまに見つかるんだよな。
「あ、その前に飲み物いいか?」
俺は、ちょうど近場にあるコーヒーショップを指差した。
海外のブランドのチェーン店であるコーヒーショップである。
「いいよ、幸ちゃんはコーヒー?」
「今日は、アイスコーヒーの気分かな。
あ、ここって特別なお豆でアイスコーヒー入れられるはずだから。
豆選んでみるわ。美咲は」
「私は、新作のフラッペ」
店頭のポスターを見てみる。
ブドウのフラッペのようだ。
なんか美味しそう。アイスとかでよくあるフレーバーだからめちゃめちゃ合いそうなんだけど。
「幸ちゃんも気になっちゃった?」
「気にはなるけど、俺にはその大きさは飲めないから」
「そっかぁ」
俺たちは、そのあとレジへ並ぶ列に並んだ。
今の時間は、そんな混んでなく割と早く順番が来た。
「お待たせしました。
店内ご利用ですか?」
「持ち帰りで、ブドウのフラッペとあとアイスコーヒーなんですけどこっちの」
俺は、横に置かれていた黒い台紙のメニューを指さした。
「コクが強くて、酸味の少ないお豆でお願いしたいんですけど」
「畏まりました。袋にはお入れしますか?」
「いえ、手持ちで」
と俺は注文をした。
久し振りに来ると緊張するな。
料金を払って、ドリンクの受け取り口へ行く。
ドリンクの仕上げをしていた店員さんが俺たちのほうを向いた。
「カップルさんですか?」
「いえ、夫婦なんですよ」
「え、そうなんですね。
仲睦まじくてうらやましいです。
デート・・・でいいですかね?
楽しんでいってくださいね」
とお店の人と話をして注文したドリンクを受け取ってお店を出た。
「はぁ」と溜息を吐いた。
「あはは、幸ちゃんすごく緊張してたね」
「いや、緊張するだろ。
ここの店員さんなんであんなキラキラしてんの」
「う~ん、このお店の人だからじゃないかな?」
もう、何の説明にもなってないがそう納得するしかなかった。
美咲は、フラッペをストローで吸っていた。
「どうだった?」
「うん、美味しいよ。
幸ちゃんも飲んでみる?」
「・・・ああ、貰うよ」
俺は、飲んでみることにした。
ミルク感が強いから、やっぱりアイスの印象が強い気がした。
まあ、これはこれで美味しい。
「うん、確かに美味しい。
美咲は、こっちは・・・ブラックだから無理か」
「無理だよ、私ブラックじゃ飲めないもん」
美咲は、チュウチュウと音を立てながらフラッペ飲んでいた。
可愛いな。
美咲は、何をしてても可愛い。
そう思ってしまうのは、俺が美咲を愛おしく思っているからなのかな。
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