第2章 俺にしか見せないおキツネさま
第32話 答えられない想い(ゴミ)
俺は、大量の手紙に占拠された靴箱にうんざりしていた。
そして、俺の横も同じようにうんざりしている美咲がいる。
俺たち二人は、GWあとから毎日のように恋文が詰められた靴箱にうんざりしている。
もう、ずっとうんざりとしか言ってないがうんざりしている。
とりあえず、この手紙達には罪はないがその想いは封を開ける気すら起きない。
「捨てるか」
「そうだね、あ。幸ちゃん、これあげる」
美咲は、オレンジ色の封筒に入った手紙を俺に差し出した。
俺も、ズボンに入れていた水色の封筒を彼女に渡した。
「じゃあ、俺からはこれな」
俺たちは、最近あまりにも頻繁に手紙を貰うからならこの受けられない想いではなく、受け取れる想いをお互いに渡すようになった。
「えへへ、幸ちゃんからのラブレターが増えてくよ」
「それは、俺もだよ。
手紙もいいものだな。気づかせてくれたのには感謝するが・・・この産廃はいらん」
俺は、慈悲もなくいらない想いをごみ箱に捨てていく。
「ほんとだよ、幸ちゃんの以外いらないよ。人妻に手を出そうなんて」
「とりあえず、美咲に手紙出したやつ絞めてくるわ」
俺は、ほんとにうんざりしてる。
もう、マジでいやだ。
さて、ここでこの数か月の話をしようと思う。
今日は、実は1学期の終業式だ。
学校に来たらこんなことになっていた。
GW明け。僕らはさらに1週間学校をさぼった。
美咲の制服が、なかなかできなかったからだ。
それで、休み明け投稿すると美咲が囲まれた。
前に比べて明るくなり、容姿もすっかり大人になったことから熱烈なファンが増えた。
俺はというと、実はGWのあとから少し身体を鍛えるようになった。
それからというものなぜかモテる様になった。
美咲曰く、「幸ちゃんは元々顔が整っているし、それに今までなかった筋肉が付いたら最強だよ」といった。
最強ってなんだよ、最強って。
そして、ある時からこんなことになった。
「あ~めんどくさい。美咲、どうせ終業式だ。
ゴミ片付けめんどすぎるからもうこのまま帰ろうぜ」
「もう最近の幸ちゃんはやさぐれちゃって。
でも、ちょっとワイルドな幸ちゃんも大好き」
「今帰れば、きっと告白タイムからは逃げれる」
「うん、帰ろう。すぐ帰ろう。
帰って幸ちゃんにいっぱい愛をささやいてもらおう」
ということで、俺たちは終業式をボイコットすることにした。
最近、ほんとに告白も多いんだ。
てか、こっちとら結婚してるんだからお前らの告白聞く意味ないだろう。と心底思う。
マジで、時間の無駄。
そりゃあ、やさぐれたくもなる。
愛を囁くのも、愛を受け入れるのも美咲だけでいい。
他のなんかいらん。
「じゃあ、愛を囁くにはサクサク帰ろう。
今日は、寝かさないぜ。子猫ちゃん」
「あはは、ちょっと幸ちゃん。似合うけど、似合わないよ」
どっちなのそれ?
あ~、見た目的には似合うけど、中身的には似合わないってことか。
「でも、寝かさないんだぁ。楽しみ」
美咲は、僕の左腕に腕を絡めて肩にもたれかかって来た。
彼女は、ここ数ヶ月で随分と外でも甘えてくるようになった。
たぶん、身長も前よりも伸びたことで俺とのスキンシップがしやすくなったのも要因なんだと思う。
「まあ、明日から休みだからなぁ」
そして、僕らは家に帰っていく。
「そっか。9月まで来なくていいもんね。
わ~い、幸ちゃんを独り占め」
「俺も美咲を独り占め・・・あ、いつも通りじゃん」
「あはは」と二人同時に笑い出す。
俺たちは、こんな手紙や告白がなければお互いを独り占めできる。
むしろ、家にいればそうそう邪魔されることはない・・・一部例外を除いて。
一部の例外は、まあ璃空達だな。
あれは例外。身内だし。
たまに、璃空と美来が遊びに来ることがある。
他の子がくることはあるけど基本は実の弟妹だけだ。
ただし、頻繁には来るなといってある。
ちなみに、あのアパートというなの豪邸は防音設備がしっかりされていて俺たちがいくら騒ごうが声が漏れることもない。
さすがに小学生に聞かせるのもどうかと思うからな。
何がとは言わないが。
さて、ここまでいったらわかると思うが千智が俺たちの担当をはずれたのには夫婦の営みの問題もあったようだ。
そりゃあ、防音がしっかりしていても同じ家の中じゃそうも言ってられない。
割とそこは心配されていたようだ。
俺たちの関係は、良好。
学校環境が最悪なだけ。
はやく卒業したい。
まあ、そうしたらきっと親父の跡を継ぐことになる気がする。
あ、でも戻るのは子供ができてからかもしれないな。
俺たちに期待されてるのは、ほぼ世継ぎ。
まあ、期待されるのはいいが道具として扱われるのは嫌だ。
俺たちは、愛し合って共に支えていきたい。
最近は、どうも思考が黒くなってきてる気がする。
これは、絶対あの学校の所為だ。
「美咲、お昼どうする?」
「簡単な物なら作れるから何か作るよ、あ・な・た」
「じゃあ、一緒に作ろうか」
「あ、それいい。さすが、幸ちゃん」
そして、俺たちは自宅へと戻って来た。
まあ、学校からは目と鼻の先だからなぁ。
そうして、俺たちの3年の1学期は終わりを迎えた。
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