第21話 優しさの持つ偽善

1時間が経った。

僕は、2Fにあるフードコートで席を取りながら二人が来るのを待っていた。

「幸ちゃん、お待たせ」

と背後から美咲に抱き着かれた。

「おかえり、美咲」

「えへへ、ただいま。幸ちゃん」

僕は、買ってきた物をテーブルの上に置き、横の席を空けた。

美咲もまた持っていた荷物をテーブルに置いた。

「美咲、お昼どうする?」

「わたし、うどんがいい」

「じゃあ「お待ちください、幸多様はそのまま美咲様と待っていてください」」

僕が席を立とうとしたら千智さんがそう制した。

「でも、女性に3人分頼みのは」

「幸多様、わたしにその気遣いは不要です。

貴方様の優しさは、貴方様の美徳ですが。

美咲さまを一番にしてください」

「わかりました、ではお願いします。僕もうどんで」

「かしこまりました、行ってまいります」

そういって、千智はうどん屋さんへと向かっていった。

う~ん、人を使うことを覚えろってことかな。

難しいなぁ。

「難しく考えなくていいんだよ」

「ああ、でもな」

「幸ちゃんの優しさは、大きすぎるの。

でも、いっぱいに振りまいてたら大切な人に向ける分が減っちゃうよ」

美咲は、自分を指さしていた。

優しさも人を通せば善にも偽善にもなる。

「わたし、幸ちゃんの優しさ好きだよ。嫉妬しちゃうくらい」

「ああ、そうだな。なるべく気を付けるよ

でも、ほんとに困ってる人がいたら僕は助けに行くよ」

「それくらいわかってるよ、だって幸ちゃんだもん」

僕は、幸せなんだと実感する。

だって、こんなに僕の事を理解してくれている人がお嫁さんなんだから。

ずっと、大切にして行きたい。

感謝の気持ちも、この愛おしく思う気持ちも色褪せずいたいな。

「ありがとう、美咲」

「ううん、わたしこそいつもありがとう」

美咲が、僕の頭を撫でてくる。

いまだと椅子に座ってるから身長差あんまりないのか。

「ねえねえ、幸ちゃん」

「ん?ああ、これ?」

「うん、何買ったのかなって」

僕は、黒色の袋を美咲に渡す。

実は、これは美咲へのプレゼントだ。

「見ていいの?」

「いいよ、美咲へのプレゼントだから」

美咲は、袋の中を覗いた。

そこに入っていたのは。

「え、かわいい。ありがとう、幸ちゃん。お家で飾ろうね」

スノードーム。

ピンク色のラメが舞う物で、中央には桜の木がありその木の下には少年と少女が腰を下ろしている。

そんな、意匠のスノードームである。

雑貨屋で見つけて買ってしまった。

ちなみに、同じ雑貨屋で手ごろなショルダーバッグを買ってあるのでこのあとの買い物はそこに入れるつもりだ。

もちろん、タグも外してもらっている。

「バッグ買ったから入れとくよ、美咲のも預かるよ」

「うん、ありがとう」

僕は、美咲の多分下着とスノードームをバッグに仕舞った。

そうしていると、千智がトレーを抱えて戻ってくる。

トレーには、きつねうどんとかけうどんがそれぞれ載っていてかしわ天がかけうどんには載っていた。

「え、千智さん。よく僕がこの組み合わせが好きって知ってましたね」

「何をおっしゃっているのですか。

幸多様をお世話して、もう何年経つと思っているのです」

千智は、優しく微笑んでいた。

もう、2年の付き合い。

いや、それ以前からの知り合いだからもっとか。

「そうでしたね、あれ?千智さんの分は?」

「それでしたら、午後はお二人で回られると思いますのでわたしはこの辺で失礼しようかと」

「千智、帰るの?」

「いえいえ、少しばかりやることがありまして。お帰りの頃に向かいにまいりますので。お二人はお楽しみください」

そう言い残すと、千智は行ってしまった。

たぶん、気を使ってくれたんだろうな。

そして、僕らのいちゃつきを見てるのが限界なんだろうな。と思ってしまった。

「じゃあ、ご飯食べたらゆっくりショッピングのつづきをしようか」

「うん、今度は洋服みたいから幸ちゃん選んでね」

「任せておいてよ、可愛い美咲を素敵にコーディネートしちゃうよ」

そして、僕らは千智が用意してくれたうどんを食べショッピング

始めるのだった。

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