第20話 惑う手
イオンにやってきた僕たち。
僕と美咲は、いつも通りに手を繋いでいた。
千智は、僕たちとは一定の距離を保ちながら後ろを歩いてくる。
「なあ、美咲。今日は、僕じゃなくてせっかくなんだから千智さんと手を繋いだらどうだ?」
「やだ、幸ちゃん。絶対どこかいこうとするもん」
いや、女の子二人いる洋服の買い物って長くなりそうな気もするし、目のやり場に困るんだけど。
美咲と買い物するのは嫌いじゃない、というか好きだ。
でも、千智を伴ってきたのはなにも移動手段としてではないと思っている。
「しょうがないなぁ、じゃあ幸ちゃん1時間だけ」
「ん?1時間?」
「そう1時間。わたし千智と・・・あのね」
なるほど、理解した。
ランジェリーショップは僕には刺激が強い。
あんなとこに言ったら僕のライフは0になる。
「ああ、わかった。そこ以外は僕も付き合うから。
一時間したらちょうどお昼時だ。
フードコートで待ち合わせ。
ご飯を食べてから午後にほかの洋服見に行こう。それでいいかな?」
「うん、さすが幸ちゃん。大好き」
「僕も大好きだよ、美咲」
「えへへ」と満面の笑みを浮かべる美咲。
僕の口角も上がっていた。
「じゃあ、僕は一時間ぶらついてくるよ。
え、美咲?」
美咲が、僕の手を放してくれない。
「う~離れたくないよ」
泣きだしそうに表情をしてる。
僕は、咄嗟に美咲の頭を撫でる。
「大丈夫だよ、美咲。
僕がそばを離れていても、僕の想いは、美咲のそばにいるよ」
僕は、美咲の左手を取って、薬指を見せる。
僕らを見ていた千智が、頬を薄く赤らめながら「クスクス」笑っていた。
やば、恥ずかしい。
ある意味、身内の前でやってるわけだから。
死にたい。穴があったら入りたすぎる。
「うん、そうだよね。ごめんね、幸ちゃん」
「わかってくれたならいいよ、まあ僕もそのさ・・・美咲の手を放したくなかったし」
僕は、美咲の手を放す。
美咲もまた僕の手を放す。
「「あっ」」とどちらの口からさっきに出たかわからない声が漏れた。
「じゃあ、1時間後に」
「うん、1時間後に」
そう言って僕らは分かれた。
さて、僕は何しようか。
僕は、特に買う服とかは・・・いや、服はあとだな。
これは、いったら怒られそうな気がする。
本屋か雑貨屋くらいかなぁ。
まあ、適当にぶらつこう。
僕は、1時間の散歩を始めるのだった。
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