第14話 質問責め
始業式が終わった。
いや、気が付いたら終わっていた。
まあ、体育館に集められ延々と長い禿げた校長の長々としたクソどうでもいい演説みたいな挨拶があった気がするが、途中から意識がない。
立ち寝という離れ技を使ってしまった。
そして、いま旧校舎4階にある3年1組の教室にきている。
僕は、左腕にしがみつく美咲と周りを囲むクラスメイトに天国と地獄を同時に味合わされていた。
どうやら、僕はヘイトを集めすぎたようだ。
というか、教室の外・・・廊下にも人垣が見える。
あ、退路まで無くなってる。
ちなみに、すでにLHRも終わり放課後である。
「神藏くん、結婚ってほんと?」
「美咲ちゃんの様子がおかしいんだけど、話しかけたら話してくれるよ」
「小動物みたいで可愛い」
などなど、質問と美咲の変化に周囲がざわついている。
とりあえず、今日でクラスメイトには落ち着いてもらわなきゃ。
「ごめん、さすがに僕も聖徳太子ではないから同時にしゃべられても答えられないよ」
「幸多、そういうことなら俺がこの場を仕切ってやろう。じゃあ、聞きたい奴は挙手」
慶介がその場を仕切りだす。
助かる。さすが、親友。
「二人は許嫁だったの?」
「そうだよ、うちの実家。ほら、あそこでさ」
僕は、教室の窓から見える神藏大社を指さした。
実家は、山の上にあるでかい神社だから割と視界に入る。
それに、10Kmも離れていないからそれなりにはね。
「実は、美咲以外にも何人か昔は許嫁候補がいたらしいんだけど。
ちょうど同年代は美咲だけだったし、でもいざ僕の今年の誕生日が近づくにつれて他家で小競り合いがあったらしいんだよね。
それで、美咲と親父が内々に進めて誕生日に結婚したんだよ」
一応水面下で起こっていたことも知っていた。
それに、上の世代は候補になる男性がいないんだよね。
それが、僕に飛び火しかけていたってことなんだけど。
下の世代に関しては、弟がどうにかするだろう。
あの世代は、人数多いから頑張れとしか言えないが。
まあ、8歳の璃空にはまだまだ早い話だ。
「愛されてるのね、美咲ちゃんが神藏くんのことゾッコンで話したくなかったってことだよね」
「まあ、そうだけど。僕だって、美咲のこと誰にも渡したくないから結婚を承諾したんだよ。僕のいままでもこれからも美咲の物だから」
皆の顔が、一応に赤くなるのが見て取れた。
あ~、だいぶやっちゃったなぁ。
まあ、いいや。
しっかり、向き合おう。
誠実に向き合えば、みんな分かってくれるはずだ。
「今日の美咲ちゃんがとても可愛いのはなんで?」
「ん?美咲はいつも可愛いけど」
僕は、美咲の頭を空いてる右手で撫でる。
すっかり怯え切ってるな。
まあ、こんなに人に囲まれるのは怖いよな。
「美咲、大丈夫。僕が付いてるから」
「うん、幸ちゃんがいるから大丈夫。でも、こうしてていい」
目をうるうるさせながら僕の目を見てくる。
心臓が、早鐘を鳴らす。
すっごく、心臓に悪いな。
「もちろん、いいよ。終わったらデートしようね」
「うん、楽しみ」
飛び切りの笑顔を向けられる。
うん、僕のお嫁さんは可愛い。
「あの神藏くん」
「ああ、ごめんごめん。どういえばいいのかなぁ。
そうだね、美咲が外だと前みたいな感じで。家だといつもこんな感じってだけだよ。
わかりやすくいえば、『素』だね。これが、ほんとの美咲」
皆が一様に首を傾げる。
あれ?なんかおかしなこと言ったかな。
「家だと?」
「あれ?みんな知らないんだっけ。僕と美咲って1年の頃からずっと一緒に住んでるんだよ。
まあ、それ以前も実家の方でもずっと一緒に生活してたけど」
「え、同棲してたの!!」
あ~、僕新しい爆弾投下したのか。
やばい、これいつになったら帰れるかわかんないや。
でも、あんまり話す内容を濁すと後々面倒だよな。
頑張ろう。
「うん、同棲してるね。一応、自宅にはお手伝いしてくれている人がいたりはするけどね」
「美咲ちゃんって、家だとどんなかんじなの?」
「家だと?このままだよ。
僕にべったりだから、着替えたら僕の部屋に来てベッド占有して、膝まく・・・痛っ!美咲、痛いよ」
「幸ちゃんが悪い、恥ずかしいからやめて」
僕は左手の甲をつねられている。
感情をだいぶ出すようになって嬉しいな。
「ごめんごめん、詳しいことは言えないけど。この通りだから甘えん坊だよ」
「「「「美咲ちゃん、可愛い」」」」
女子がきゃきゃあ言いながら美咲を見ていた。
これは、美咲にもヘイトが向いてるよね。
まあ、危ない方ではないからいいか。
女子って、恋バナ好きだもんな。
「美咲まだ、人見知りが激しいからあまり囲ったりせずにみんな接してほしい。
過度すぎるときは、僕も止めるけどよかったらこれからも仲良くしてほしい。
もしも、1年の時みたいなことがあったら僕が許さないからね。
美咲も、それでいいよね?」
「うん、私頑張る。みんなよろしくね」
こうして、僕たちの放課後質問タイムは終わるのだった。
「はぁ」つかれた。
そして、人垣はまばらになっていく。
みんな、理解してくれてよかった。
さて、放課後デートだぁ。
楽しみだな。
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