第10話 そして、君と歩む日常

「幸ちゃん、幸ちゃん」

「なに?美咲」

「ううん、呼んだだけ」

ニカッと笑っている美咲。

いまは、式も終わり自宅に戻ってきている。

僕らの生活は、あまり変わらない。

変わったのは、美咲が神藏 美咲になったくらいかな。

お互いの左手の薬指には、シンプルなデザインの指輪が嵌っている。

「これからは、しっかりお嫁さんする」

「無理に変わらなくてもいいんだよ、そのままの美咲が好きだから」

「あうあう」と不思議な声を上げる美咲。

もう、すでに茹蛸の様に顔が赤かった。

「わたしだって、幸ちゃんのためにできることした。お料理も頑張って覚える」

「料理って・・・美咲かなり不得意じゃん」

「うん、怪我するかもしれないし、爆発するかもしれないけど幸ちゃんに美味しいっていてもらえるご飯食べてもらいたい」

前提がとても怖いけど、悪い気はしない。

でも、心配なんだよな。

僕らが夫婦になったといっても、千尋もいままで通り住み込みで僕らの世話をしてくれている。

まあ、キッチンの事はキッチンの番人にまかせなきゃな。

「じゃあ、美咲。料理の練習条件があるよ」

「なに?」

「かならず、千智さんの言うことを守ること」

「頑張る」

おお、やる気に満ちている。

美咲にしてはいい傾向かもしれない。

せめて、身近な人には慣れてもらわなきゃな。

来週には、学校が始まる。

高校最後の年。

あ、友達に説明しなきゃならんのか。

めんどくさ。

「幸ちゃん、幸ちゃん」

「はいはい、なに?」

「好き」

そういうと美咲が抱き着いてきた。

僕らの日常は何一つ変わらない。

この屈託ない笑顔があれば僕は頑張れる。

美咲の笑顔を守るために、僕はなんだってするよ。

だって、僕の大切なお嫁さんなんだから。


序章 完

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