第8話 美咲の策謀
朝になり、僕らは二人揃ってダイニングに向かった。
「美咲様!そのお姿は」
千智の声に、美咲は驚いて僕の後ろに隠れた。
おいおい、隠れるのかよ。
「隠さなくてよくなったらしいですよ、千智さん」
「おキツネさまだったんですね、知りませんでした」
あれ?巫女には情報ないのか。
てっきり知っていてお世話してるんだと思ってたわ。
「てっきり、知ってるのかと思ってましたよ」
「わたし、宮では末席なので」
「家ではリラックスしたい」
あ、美咲の本音がでた。
隠す術?の維持がめんどうなのだろうか。
なんか、MPみたいなの使うとか。
「わかりました、私のことはお気になさらず。お二人のお心のままに」
美咲が小さなガッツポーズをしているのが横目で見えた。
「それと、昨日親父から結婚を告げられました」
「え、結婚ですか?宮司さまが」
「いや、僕と美咲がです」
「え~」と大声を上げる千智。
まあ、そりゃ驚くよね。
僕だって驚いた。
それに親父が結婚だとしたらお袋に殺されるんじゃ。
尻に敷かれてるあの人がそんなことしたら血の雨が降るって。
「それで、天気雨が」
「そうみたいですね、あれ?狐の嫁入りだから美咲が僕に嫁ぐでいいんだよね・・・神楽宮家は大丈夫なのかな」
「お姉も妹もいるから大丈夫」
僕の後ろにいる美咲がそう答えた。
千智はいつの間にかキッチンへ戻っていた。
朝食の準備はありがたい。
お姉と妹。
ああ、20代半ばの美景さんとまだ5歳の美来ちゃんか。
美咲が急に僕の前に出てきた。
「だから、私は幸ちゃんのお嫁さん」
「ああ、そうだな。美咲は僕のお嫁さんだ」
僕は、美咲の頭を撫でていた。
あれ?まてよ
「ねえ、美咲」
「なぁに?」
「美咲の家族もその」
美咲は、ポンと両手を使ってなるほどいう感じの仕草をして見せた。
「4正家全部」
「え・・4正家全部!!」
四柱の神と神の使い。
そういう符号かぁ。
なるほどね。
「神楽宮は狐の神使」
「ん?『は』?」
「4正家それぞれ別の神使」
なんとなくなんの動物かはわかる気がする。
青龍の神使は、怖いんだけど。
蛇とかトカゲとかだよね。
僕、爬虫類苦手なんだよ。
「幸ちゃんは、私の。ほかの家にはあげない。だから大丈夫」
もしかして、美咲。
僕のために、誕生日の結婚式にしようとしてる?
「幸ちゃんは、わたしの旦那様。ほかの人にはあげない」
フンスフンスと鼻息荒めに美咲がそう言った。
「美咲、ありがとう。最高の誕生日プレゼントだ」
どうやら僕は、他の4正家に狙われていたようだ。
美咲は、親父に根回しをして僕の誕生日に結婚式をするように進言したんだろう。
彼女には、頭が上がらない。
「ありがとう、美咲」
「えへへ、どういたしまして」
満面な笑顔の美咲。
心が満たされていく。
僕はこの笑顔を守っていきたい。
美咲がいれば、僕は何でもできる気がする。
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