第5話 幸多と千智(1)
僕は、美咲を起こさないようにゆっくりと動いて自室を出る。
部屋から出て、リビングへと向かう。
リビングは12畳ほどの広さがあり、その横にもアイランドキッチンとダイニングがある。
ダイニングキッチンも大体12畳くらいかなぁ。
「幸多様、なにかお飲み物用意いたしましょうか?」
「ありがとうございます、コーヒーもらえますか」
「かしこまりました」
僕は、ダイニングに向かう。
ダイニングには、4人掛けのテーブルセットがある。
僕は、椅子を引いて座る。
「お待たせしました、幸多様」
「え、待ってないよ。ありがとうございます」
待つって何ってくらいにすぐ出てきた。
基本、僕はブラック派である。
「今日は、食後ということでエチオピアのお豆にしてみました」
そういうと、千智は僕の前にオレンジピールを使ったクッキーを置いてアイランドキッチンへと戻っていった。
酸味の強いコーヒーに、柑橘系の酸味が合う。
「美味しい、いつもありがとうございます」
「いえいえ、美咲様はお昼寝ですか?」
「いつものことですね、お腹が空いたら起きてくると思いますよ」
「でわ、私は夕餉の準備をいたしますね」
「お願いします」
僕は、コーヒーを啜りながらリビングの先にある庭を見ていた。
庭先を眺めているともう空は黄昏色に染まっていた。
いつの間にか夕方になっていた。
日がだいぶ長くなってきていたと思っていたけどまだまだくれるのが早いなぁ。
面倒だが、親父にメッセージを返しておくか。
『明日朝一で向かいます』とメッセージを送るとすぐに返事が返ってきた。
『分かった、待っている』と。
「はぁ」と今日何度目かの溜息を吐いた。
19時ごろになりのそのそと美咲がやってきた。
「幸ちゃん、幸ちゃん」
「ここにいるよ、ご飯にしよ」
「うん、食べる」
千智は、美咲が起きる少し前にダイニングのテーブルの上に夕飯を用意すると自室に帰ってしまっていた。
美咲は、僕が座る横の席に座る。
それも、僕に密着するように。
美咲は、自宅に着くと急に幼児退行する。
見た目と中身が一致する感じさえする。
テーブルには、焼き魚と唐揚げ、法蓮草のお浸し、ひじき煮、油あげの味噌汁が置かれていた。
いつも、ありがたい。
僕は、料理ができないことはないけどこんな手の込んだものはできない。
美咲は、料理は得意ではない。というか危険。
彼女に作らせると・・・いや、怖すぎて考えたくない。
「明日さぁ、朝一でいくから」
「起こして」
「わかったよ」
美咲は、朝が弱い。
だから、僕が起こすしかない。
まあ、隣に寝てるから起こすのは簡単だけどね。
そして、夜は更けていく。
「はぁ」と溜息を吐いた。
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