第十話

 私は胸騒ぎがし、被害女性の自宅へと急いだ。好きだった男性が自分を騙しているだけだと知って、お金を巻き上げる為だったと知って、さぞ絶望していることだろう。間違いを起こさないといいのだが、、。


 訪れたマンションはオートロック式だった。


「うーん、出てくれないわねー」

 オートロックを開錠して欲しくて部屋番号を押したが、反応は全くみられなかった。


「電話も出ないよ」

 梨名はずっと呼び出し音を鳴らし続けてくれているが、応答は無いようだった。


「どうするんですかー?」

「住人が出入りした隙に入り込むしかないんじゃない?」

「緊急を要するかもしれないから悠長に待ってる訳には、、」


「梨名さんなんか自殺の音とか聞き取れないんですか?」

「聞こえる訳ないだろ!それに自殺の音って何だよ!」


「自分こそ壁伝いによじ登れないのかよ」

「登れると思いますけど、真昼間にそんなことしてたら流石に通報されると思いますけど」


「もう通報して開けてもらっちゃいましょうか?」


 そんなこんなしていた時、運よく住人が出てきてドアが開いた。私達は中の人に開けてもらったような顔を装い、出て来た人に挨拶をして中に飛び込んだ。

 一気に部屋の前まで駆け上がるとチャイムを鳴らす。


「ヤバっ!なんか息絶え絶えな呼吸音が聞こえる!」


 梨名のその言葉を聞いた私はドアを蹴破ろうと思って蹴りを入れたがビクともしなかった。


「保乃さん、下がっててください」


 天衣は私に下がるよう言うとドアを蹴り破った。私がやってもビクともしなかったドアを簡単に蹴破って見せた。私が呆気に取られている間に梨名は中に入り込み浴室で悲鳴をあげた。


「私が応急処置をするから梨名は救急車を!」


「救急車!?そ、そうね。でもここなんていうマンションだっけ?」


「隣の人叩き起こして応援頼んで!」


 私達は後のことは救急隊の方にお任せし、その場を後にした、、。



「何も自殺することなんてないのに、、」


「2人も言っていたでしょ。恋をしてウキウキ気分でいたのに、それは騙されていたと知った時の絶望感は半端ないわ。こういう娘も出てくるわよ」


「やりきれないですね、私絶対許せないです」


「復讐は飛奈と華鈴がやってくれるわよ。私達はクソヤローのボディーガードのクソヤローを殺るのみ」


「それでどうするの?さっそく乗り込む?」



 会長の住居は本社ビルの最上階だった。最上階まで直通の専用エレベーターがありそれで行き来している。他のエレベーターは最上階には止まらない構造になっていて、最上階に行くにはその専用エレベーターを使うか、非常階段を使わないと行けないようだ。


 専用エレベーターは会長かボディーガードしか使わない。専用エレベーターで上がって行ったら流石に注目を浴びてしまうだろう。他のエレベーターで下の階まで行って非常階段を使って乗り込むのが無難だろう。

 しかし、本社ビル内の奥に進むには駅の改札のようなものがあり、社員達は社員証のようなものをタッチし改札を通り抜けていた。簡単にビル内には入れないようだ。


「社員証ないと入れないんじゃないの?」

「大丈夫よ。じゃーん、ちゃんと華鈴さんが用意してくれていましたー」


「じゃあ、今から乗り込むんですね」

「今の時間は会長はゴルフよ」


「じゃあ何でここに来たんですか?」


「華鈴さんの入れ知恵では、屋上への通路を塞いで換気口も塞いでエレベーター止めて、通信手段も封じて非常階段から煙を上げて燻り出してみてわって言ってたわ」


「それメチャクチャ良いじゃん。アイツ等の慌てふためく姿が目に浮かぶわ」


 私達は今出来る工作をし、会長が戻って来るまでいったん帰って待機することにした。

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