第八話

「株式投資で利益を出されたとの事なんですが、具体的にはどのようにされたのですか?」


 その日私は遂にケバ女と食事の席についた。相談所で散々株で儲けた事を吹聴して回り、好奇心を煽り遂にこの日を迎えたのだ。ケバ女は意味の無い雑談を続けた後、頃合いを見計らってその質問をぶつけてきた。

 けっ!金の亡者が、散々人様からお金を巻き上げておいてまだ欲しいのか?どうしようもないクズだな。まあその貪欲さがあるお陰で罠にかけやすいんだけど。


「たまたま運が良かっただけですよ」


 あー、くっさ、早く帰りたいけど、簡単に答えちゃうのも腹立つので濁してやった。高級料理が次々と運ばれてくるが鼻が曲がってしまって、料理の匂いが分からないのでいまいち美味しさが感じられない。

 ケバ女は美味しいと感じているのだろうか?っていうか食べ方が綺麗には見えないんですけど?この程度の人間なのか?それとも相手が私だから適当にしているのか?どちらにしてもお前が講習受けろよとツッコミたかった。


「御幾らくらい利益出たのですか?」


 適当に質問を流していると、痺れを切らしたのか直接的な質問をしてきた。そこ聞くか普通、敵意ないように笑顔作ってるみたいだけど小皺が凄いぞ年増女。毎日のケアちゃんとしてるのか?スキンケアの講習必要なんじゃないのか?

 歳だから乾燥して化粧ノリが悪いんじゃないのか?メイク講習一番必要なのはお前なんじゃないの?メイクが浮いてきてるぞ、そろそろ保湿してこいよボケ!


「まあ10億程ですけど」

「じゅ、10億!?」


 ちょっと盛り過ぎてしまっただろうか、思っていた以上に驚いた様子を見せたのでちょっと不安になってしまった。まあでも信用させるだけの嘘は用意してある。


「私の知り合いに研究所で働いている者がおりまして、そこで長期間保存出来る食品の開発研究をしているのです。先日また大きな地震がありましたでしょ。そこで一気に需要が伸びで株も急上昇したもので」


「それで大きな利益に繋がったと?」


「はい、もし気になるなら今が買い時ですよ。需要が落ち着いてきて株価が下がってますから。また大きな地震が来たら暴騰すると思いますよ」


「なるほど、そういう事だったのですね」




「というわけで取り敢えず興味は持ってもらったみたいだけど、これからどうするの?」


 ケバ女との食事を終え帰宅すると、これからの見通しを華鈴に尋ねた。


「もうバッチリよ。そのケバ女のパソコンにハッキング完了したわ。ケバ女の資産どうとでも出来るわよ」


「でも資産奪ったからって生かしておいたら、また同じこと繰り返すだけなんじゃないの?」


「株にはね、信用取引ってのがあるのよ」


「は?」

 急に何を言ったのかと思って目が点になってしまった。


「分かりやすく言うと証券会社に預けた現金を担保にして、お金を借りて取引する方法があるのよ」


「はぁー?」

 全然分かりやすくないんですけど?


「つまり借金して株を買ってその株が暴落したら預けた現金は戻ってこないし、借金も残るってこと」


「借金を残した上に被害者に訴訟を起こしてもらって相談所は解体させる。資産も会社も全て失わせて借金だけ残させて、愛人関係も暴露して社会信用を失墜させるなんてどうかしら?」


 ケバ女の手元に残るのは借金だけにするってことね。


「いいわねー、それで進めて」

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