第七話
「あなたは株で儲けて資金が豊富にあるって言ってきなさい」
「そんなんで大丈夫なのー?」
「大丈夫よ。金の亡者ならきっと喰いついてくるわよ」
「そう言っても全額投資するとは限らないじゃない」
「私が知りたいのはその女社長の個人資産がどこにあって、いくらくらい持ってるかよ。それが分かればこっちで操作して勝手に頂いて、株を大暴落させればいいだけ」
「あっそ、じゃあ私は会って興味持たせればいいのね」
「体育会系のあなたにも出来る事でしょ」
「誰が体育会系よ!私は歴としたリケ女よ!」
そう言われ女社長の大体のスケジュールと行動パターンを教えてもらい、普通の顧客として相談所を訪れた。女社長が興味を持つように高額商品を惜しむことなく買って、興味持つような儲け話をしろとの事だったが果たして上手くできるものなのだろうか。
まずはどうやって接触するかよね。奥の事務所で作業しているんだろうし、行動パターン教えてもらっても表側に来てもらわないと接触のしようがないじゃない。どうしたものかと考えていたら表玄関に高級車が停まった。
普通に高級車で乗り付けて来るんかい!車から降りてきた女の顔を確認すると私は心の中でツッコミを入れた。車はボーイ風の男が裏の駐車場まで運んで行くようだ。ここは高級ホテルかよ!とまたツッコんだ。
女は秘書風の女に出迎えられ、表玄関から悪びれる事なく堂々と入って来た。お客さんがいるんだぞ!普通は遠慮するだろ!
呆れたー、自己顕示欲もここまでくると病気よね。あー、完璧ターゲットの女社長じゃん。若づくりしやがって、ケバくなっているって自覚ないんかい!笑っちゃうほど分かりやすいセレブ感出してやがって。ケバ女!
「おはようございます」
「おはよう」
従業員たちはそのケバい女に次々と頭を下げていく。誰かやり過ぎて気持ち悪くなってますよって教えてやれよ。
「くっさ!!」
ケバ女が入ってきた瞬間、キツめの香水の匂いが広がった。誰か臭いですよって教えてやれよ。
「橋本薫さんですよねー、先週発売になった週刊誌見ましたー、握手させてください」
鼻が曲がりそうなのを我慢しいきなり訪れた絶好のチャンスに、媚びた声を上げ近寄った。私に幾分警戒心を見せたが握手に応じてくれた。私はここぞとばかりに畳み掛ける。
「普段からそんな素敵な装いされているのですかー?」
「まあ、そうね」
ファンだと言って声をかけたので邪険にする訳にはいかないと思っているのか、警戒心を露わにしながらも応じてくれる。私が名乗りを上げるとどこかで聞いた名だと思ったのか秘書の方に目を向けた。
秘書は慌てて何かを引っ張り出すとケバ女に提示する。私が最近高額商品を買った顧客だと確認したのだろう。そこから急に態度を軟化させた。
「田渕飛奈さん、この度は当相談所のご利用ありがとうございます」
バカ女め単純な奴だ。この程度であっさり信用したか。
「いいえー、こちらこそお世話になります。まずは自分磨きから始めようと思ってまして」
「そうですか、当社には優秀な講師が揃っておりますので、きっと有意義な時間になると思います」
「はい、期待してます。私はどうもせっかちでガサツで貧乏性なものでそれが改善できれば、素敵な出会いに巡り合えると思ってます」
「飛奈さんならきっと大丈夫ですよ」
「まあ、ありがとうございます。有難いことに資金面では苦労することがなくなりましたので、後は素敵な家庭が出来ればと思ってますのでよろしくお願いします」
「そうなんですか?何か事業が成功したのですか?」
あっさり喰いつきやがった、ケバ女が!
「いえいえ、ちょっと持ち株が急上昇したのでそれでちょっと」
私のその言葉を聞いた女社長はかなり興味津々だったようだが、秘書に今後の予定を言われたのか『今日はこれで』と、その場を立ち去って行った。第一段階はクリアといったところだろうか。きっとゆっくり話がしたいと思っているはずだ。
もしくは私から搾り取れるだけ搾り取ろうと考えたか、今まで散々未来ある女性の笑顔を奪ってきたんだ。必ず地獄に落としてやる。
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