第二話
「ただいまー」
「飛奈どうだったイベントは?」
部屋に帰るなり保乃先輩、梨名、天衣が興味深そうな顔をしながら、私の話を聞きたくて仕方がない様子でいち早く集まってきた。
「もう最悪よ。完全に場違いな感じで終始浮いてたわよ」
「ホントですかー、素敵な彼氏さん見つけちゃったりしたんじゃないですかー?」
「なーにそれ?もしかして私に彼氏が出来たら嫉妬しちゃうって感じなの?私の可愛い天衣ちゃん」
「いや、、そうじゃなくて、、」
「誰か良い人いなかったのかよ?」
「いなかったわよ」
「あー、いたんだな」
こういう時、梨名の特殊能力は厄介だ。隠し事一つできやしない。
「誰なの?どんな人なの?」
保乃先輩は目を輝かせながら詳しく聞きたいと促してくる。
「どんな人って言われても、爽やかな好青年って感じな人だったよ」
「それでそれで、連絡先交換してきたの?」
「しないわよ」
「なんで?」
「なんか別の女とペアになってたし」
「あははは、そうだよねー、好青年と飛奈とじゃ釣り合いが取れないもんねー」
「うるさいわね。梨名だって好青年とは絶対釣り合わないし、お前はオタクデブとお似合いだ」
「あははは、リーダーそういえば梨名さん相性診断で恰幅のいい、一つの事に打ち込める専門家タイプが良いって出てたんですよー」
「あははは、それってまさにオタクデブのことじゃん。やっぱりねー、私の目に狂いはなかった」
「天衣テメー、なんでここでそういうこと言うんだよ。自分だって照れ屋さんのクリエータータイプと相性最強だったろうが!」
「専門家よりクリエーターの方が断然いいじゃないですか?」
「照れ屋のクリエーターってただの引き籠もりじゃねーか!」
「違いますよ!」
「お前は引き籠もりとくっついてろ!」
「梨名さんはオタクデブと仲良し決定で!」
「それで飛奈その青年とは何でダメだったの?」
保乃先輩は全然話が進まないので、梨名と天衣は放っておくことにして話を進めようとしてきた。
「何でって言っても私が単純に魅力がなかったんじゃないの?」
「そう?あなたは十分魅力的よ」
「男なんて結局小柄な可愛い女性が好きなのよ。私みたいなゴツい筋肉質女は敬遠されるんだって」
「そいつサクラだったんじゃないの?」
「サクラ?」
「そうサクラ、そういうイベントってサクラ同士がペアになって、上手くいく人もいるんだぞってアピールしているらしいわよ」
「そうなの?」
「そうよ。その青年とペアになった女性が二人で話ししていたか覚えてる?」
「いやー、そこまではちょっと、、」
「そうでしょ。初めから決まっていたんだって」
「何それー、詐欺じゃない」
「それを立正するために行ってたんでしょうが」
「いいのよ。その娘にそこまでのこと求めなくても、カメラ仕込んでおいて中の様子はだいたい分かったから」
そう言いながら華鈴は自信ありげな表情をしてきた。何か掴めたのだろうか?
「だいたいって何が分かったの?」
「マッチングしていた人達は全員サクラね」
「はっ?どういうこと?」
華鈴の説明ではサクラと思われる人は、会場に単独で来ていた人にそれぞれ話しかけていて、婚活の本気度を探っている感じだったとか。なぜそんな事をする必要があるのよと聞くと、婚活にそれだけ前向きということは相談所の提案に乗りやすいってことでしょ、と言ってきた。
私がまだいまいち分かってない顔をしていると、コイツ等は詐欺師でお金をふんだくろうとしているんだから、本気であればあるほどカモにしやすいと考えるはずでしょ、と言われた。
友達と一緒に来ていて、あわよくばいい出会いに恵まれるかもなんて考えている奴には目もくれず、こちらからの提案に乗ってきそうなカモを探している感じなのだとか。つまり今回なぜ上手くいかなかったのかを一緒になって考え、それを満たせるような提案をしてくるのが奴等のやり口らしい。
私がなぜ上手くいかなかったのかを一緒になって考え、もう少し女性的な振る舞いが必要で、言葉遣いも悪いから不味かったんじゃないかと提示する。
そして女性的なマナー講習、言葉遣いの講習を受けてみないかと提案してくる。そしてその講習を受けるのにはお金が必要だと言って高額な金額を提示してくる。
一度失敗させてそれに対してこうすればいいのではないかと提案する。それをクリアすれば素敵な未来が待ち受けているかもしれないと思い込ませ、こちらの思い通りに仕向けようとしてくる。そういうことらしい。
「汚いやり方ねー」
「このやり方でいくら儲けているのでしょうね」
「それでなぜ私達がこの件に絡まないといけないの?」
「こんな汚いやり方しているんだから当然何度もトラブルが起きている。でもこの相談所の裏には反社会的な組織がついている」
「だから被害者は泣き寝入りするしかない。そんな奴等を成敗するために私達のような存在が必要ってことね」
「分かったわ。やりましょう」
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