最終話

「保乃先輩、どうしたんですか?」


 部屋に戻ってきてもいまいち心が晴れていない様子の私を心配してか、飛奈は声をかけてきた。


「薬物密売組織、壊滅させちゃいます?」

「無理よ。警察組織だって出来ないでいるんだから」


「甘っちょろいことしてるから出来ないんだと思いますよ」

「まぁそうかも知れないけど」


「緊急速報です。外遊に向かう予定だった。石井康静厚生労働大臣が交通事故に遭い亡くなってしまうというショッキングなニュースが入ってきました、、」


「交通事故ー!?」

 飛奈は驚きの声を上げた。


「そんなんで隠蔽終了?」

 私もガックリ項垂れる。


「やっぱりもっと派手にやらないと世間に真相出回らないわよ」

 華鈴さんがニュースを見て驚いている私達の後ろからそう声をかけてきた。


「やっぱり薬物中毒患者で溢れ返らせればよかったんだよ」

「だからそれはダメだって、治療施設がパンクしちゃうでしょ」


「梨名さーん、大変です!これ見てください!」

 天衣はそう言って入って来るとスマホの画面を突き出した。


「なになに?大麻で依存症と呼べる状態になっている人は1割程度で9割の人は依存症を感じる事なく使用していることになる、、」


 梨名はあからさまに全員に聞こえるような大声で、差し出されたスマホ画面に表示されていた文字を読むと天衣と共に華鈴さんの方に白い目を向けてきた。


「華鈴、依存症を感じる前に止めるんだぞ」


 要するに華鈴さんが大麻常習者でまだ依存症になっていないだけだから、早く止めたほうがいい、そう言いたいのだろう。華鈴さんはまだ彼女達の中で薬物中毒者のレッテルを貼られたままのようだ。


「テメー等、いつまで言ってんだー!」


「ヤバイです。中毒患者が騒ぎ始まりました」


「よし!逃げよう」


「待て!コラー!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る