第十一話
「新しい仲間を祝してー」
私は完全に飛奈達と行動を共にすることを決め、共同で住んでいるマンションのシェアルームに引っ越してきた。部屋を訪れるとクラッカーの音が鳴り響き、火薬の匂いが鼻についてきた。
「あなた荷物それだけなの?」
トランク一つで引っ越してきた私の姿に華鈴さんは驚きの声をあげた。
「保乃ー、お腹空いたー、早くそれ部屋に置いてこいよー」
梨名がそう声を上げた。テーブルには豪華な料理が並んでいる。きっと皆んな私が来るまで待っていてくれたのだろう。ここのシェアルームは下の階が共同スペースになっていて、上の階に個人ルームが付いている。早く案内してもらって降りてこいよ、ってことなのだろう。
「梨名さん散々つまみ食いしてたじゃないですかー」
「あんなのお腹の足しにもならねーよ」
「梨名さんの胃袋は底なしですもんね」
「人の事言えんのかよ!」
「ほらもう、めでたい日なんだから喧嘩しない」
「自分はいいよなー、味見とかいって散々食べれるから」
「いつもああなのよ、仲良すぎて喧嘩ばっか、うるさくて仕方ないんだからほんとに」
そう言って華鈴さんは私の手を引き、階段へと向かう。階段を上がるとドアが10程見られた。手前から飛奈、梨名、華鈴、天衣と続く。
「部屋に鍵は付いてるけど、誰も使ってないけどあなたはどうする?」
部屋の前に到着するとそう言われた。女子だけだし、中に入られても困りはしないから個人ルームの施錠はしてないとか。
私も大丈夫。そう答えた。中はホテルの広めのシングルルームのようだった。綺麗にベットメイクされたベットの隣には簡易テーブル、簡易照明が備え付けられていて、ベットの足元には大型テレビが見える。その奥に広めの窓があった。
「綺麗」
窓から見える夜景に思わず声を上げる。
「一応窓ガラスは防弾にしてあるけど、狙撃には注意してね」
防弾?まあそうか、危ない活動してるもんね。狙われる事もあるか。窓の手前にはL字型のソファーにテーブル、その奥、大型テレビの隣はパソコン台、ドレッサー兼デスクになっていた。
「バス、トイレ、キッチンはついてるけど皆んな、だいだい共同の方使ってる」
基本個室は寝る時だけ使う感じらしい。皆んなリビングにいて華鈴さんはそこでパソコンかゲーム、梨名は音楽を聴くか弾くかしていて、天衣はトレーニング、飛奈はキッチンで創作料理かスイーツ作りをしているとか。
「リビングにはまだまだスペースあるから自由に使ってちょうだい」
「都内の駅近のこんな良い物件どうしたのよ?」
「金持ちから奪った」
「奪ったって、その金持ちはどうしたのよ?」
「殺した」
殺しを世直しだと思っている彼女達からしたら、殺人は正義なのだろうがそんなにサラリと言われると、、感覚がおかしくなってしまいそうだ。
「あと週に一度ハウスクリーニング入るから、触れられたくないものは棚に仕舞っておいてね」
「ハウスクリーニング?」
「そう、前の住人がそういう契約だったみたいだからそのまま継続してる」
「その時言ってもらえればカーテンとかカーペットとかベットカバーも自由に好きなデザインの物に変えられるから」
何という快適な空間に彼女達は住んでいるんだ!私が部屋に見惚れていると、、。
「あの娘達どう思う?」
華鈴さんはいきなりそんな質問をぶつけてきた。返答に困っていると、、。
「あの娘達が喰いものにされて、クソやろーが私腹を肥やす世の中ってやっぱりおかしいと思う。今あの娘達が法律で裁かれたら死刑でしょうね。でももしそんな判決が下されたら、私は下した奴ら全員死刑にしてやろうと思っている。私はその覚悟を持ってここに入居したから」
私がまだ中途半端な気持ちでいるのを察しての言葉だったのだろうか?彼女達の活動を邪魔立てする奴は容赦手加減しない、する必要はないと言いたかったのだろう。その言葉は私の心に深く刺さってきた。
「分かってるわ」
その言葉を聞いた後、華鈴さんは私の事を大歓迎と受け入れてくれた。そして飛奈達の事をいろいろ教えてくれた。あの娘達は全員心に闇を抱えていて、自分の命を軽く見ている節があるから暴走したら止めて欲しい。あなたが仲間になってくれて心強いわ。そう言っていた。
でも私で彼女達の暴走止められるだろうか?ただ死んでほしくないという気持ちは華鈴さん以上である事は間違いない。他にもやり方があるんじゃないのかと思っていたが、私は腹を括ることにした。
荷物を置き部屋を出ると私は宣言した。
「私決めた。権力を傘に私腹を肥やしている奴等は抹殺する」
「なんだよいきなり、未成年の主張かよ」
いきなり私が上の階から宣言したので梨名はツッコミを入れてきた。
「あーぁ、言っちゃいましたねー、リストいっぱいあるんですよー、華鈴さんにこき使われちゃいますよーきっと」
「いいから早く降りてきなさい、まずは新しい仲間を祝して宴だー」
そう言って飛奈は次々と豪華な料理を運んできた。私が美味しい、美味しいと言っていると更にテンションを上げ料理を運んでくる。飛奈は食べないの?と聞くと私は作るのが好きだからと言っていた。
「リーダーはホント料理が上手で、しかもこの商品はどこのスーパーが安いとかも知ってて、ここのお母さんって感じなんですよ」
「まあケチくその女好きとも言われてるけどね」
「いいやあれはドケチでど変態の元気の押し売り女です」
仲間から散々な言われようなのが飛奈っぽくてなんだか笑えてしまった。
そんな談笑が続いている時、華鈴さんのパソコンが急に点灯した。その場の全員の笑顔が消え華鈴さんに視線が集まる。華鈴さんは素早くパソコンの前に移動する。
私が不思議がっていると梨名が華鈴さんが設定しておいた罠に何か引っかかったみたいと教えてくれた。何かとはなんなのだろうか?
「華鈴どうしたんだよ?」
「盗聴器が何か気になる言葉をキャッチしたみたい」
「何をキャッチしたんだよ?」
相変わらず気短さんの梨名は矢継ぎ早に質問をする。
「先生、大変です。子飼いにしていた麻薬捜査官が捕まりました」
「何だと!?まさか!私にまで捜査の手が及ぶとこになるのか?」
「それはありません。が、重要な資金源を失いました」
「それなら問題ない、外遊の際、手土産をもらえる手筈になっているからな」
華鈴さんは秘書のスマホをハッキングし、会話を盗聴するように設定しておいたそうだ。そして会話の中から薬物関係の単語が出たら自動で録音しアラームがなるように設定しておいたとのことだ。
私がそんなことできるものなの?と質問すると、それは後で説明するからこれからどうするか方針を決めましょうと言われた。
「決めるも何もないでしょ。薬物がらみであんな心を抉られるような事件を見たばかりなんだから、薬物を持ち込もうとしているなら許せないわ」
「抹殺決定ね」
あれだけの光景、薬物使用者の現実を見せられたのだ。もう1mgたりとて国内に持ち込ませたくない。薬物があればそれを利用し金を儲けようとする奴がいる。それに関連したな犯罪が生まれる。犠牲者が生まれる。
放置しておく訳にはいかない。特に権力を握り、自分は法で裁かれない立場にいると思ってる奴は、私達が裁くしかない。
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