第八話

「ひゃー、でっかい家!これ個人宅なんですか?」

「天衣これはヤバいね。完全に裏組織の邸宅でしょここ?」


 カメラに映っていた車のナンバーから持ち主の名前、住所は簡単に特定することができた。飛奈と天衣はすぐにその住所へと向う。向かった先は郊外の一戸建ての高級住宅地が立ち並ぶエリアの一角にあった。

 個人宅とは思えないほどの大きな敷地はこれまた大きな壁で覆われていて、各所に監視カメラが取り付けてあった。近くの住人を装い監視カメラの位置を確認しながら一周する。

 そしてその後この付近には塀の中を除けそうな高台は見当たらなかったので、近くの公園でドローンの準備をした。


「リーダー、ちゃんと真っ直ぐ飛ばせるんですか?」


「当たり前でしょ。ドローンの名手あすちゃんと呼ばれているんだから!」

「何ですかそれ?聞いた事ないんですけど、、」


 そう言いながらケースからドローンを出すと、どうみても手慣れている動作とは思えない感じでスイッチを探し出し、オンにし操作盤に向かう。ケース自体が操作盤になっていてドローンからの映像が見られるモニターも付いている。

 そしてまた不慣れた感じで操作盤を操作し出すと、上手いこと飛び上がったので拍手をしたが、次の瞬間一回転し草むらに突っ込んで行った、、。


「本当に大丈夫なんですかー?」


「大丈夫よ!私の頭は工学部系なんだから!」

「何ですかそれ!」


 リーダーは私に墜落したドローンを取りに行かせると、操作盤と睨めっこをし始めた。再びツッコミを入れると照れ笑いを浮かべ、もう一度同じ動作を繰り返す。今度は上手く飛び上がり空中で停止していたので大丈夫かと思ったが、、。


「ちょ、ちょっと、どこに飛ばすんですかー!」


 ドローンは目的とは逆方向に飛んでいき、木にぶつかりまた墜落してしまった。


「ちょっと私に貸してみてください」


 天衣はそう言って操作盤の前にいる飛奈を押し退け操作してみたが同じく変な方向に飛んでいって墜落させてしまった。


「何やってるのよ!まだ準備できないの?」

 痺れを切らした華鈴の声がイヤホン越しに聞こえてきた。


「まっすぐ飛ばなくて、、」


「何してんだかもー、機械音痴なんだから!」

「すいません、、」


「ケースに赤いボタンついてるでしょ。そこ押して」

 華鈴に言われた通りボタンを押すとドローンは上空高く飛んでいってしまった。


「ドローンどこかに飛んでいっちゃいましたよ?」

「いいのよ、こっちでコントロールしているから」


「そんな事も出来るの?」

「いいからモニター見てなさい」


 そう言われモニター画面を注視する。そこにはケースに向かっている私と天衣の姿が映し出されていた。上空を見上げるとドローンを視認することはできない。そして画面の映像がどんどん拡大していき、私達の髪の分け目が確認できるくらいにまで拡大していった。


「こんなに綺麗に映るの?ドローン全然見えないんですけど?」


 視認できないくらいの高さまで飛んでいるのに、こんな高画質の映像が見れるのかと驚きの声を上げていると、いつの間にかモニターの映像はあの邸宅の上空の映像に切り替わっていた。

 なんかちゃんと操縦できているようなので、ちょっと悲しい気分になった飛奈と天衣だった。



「飛奈どう?見えてる?」


「見えてるわ。もう少し斜めの映像が欲しいわね。真上すぎて車のナンバーが見えない」

「了解」


 飛奈の指示通りドローンを動かすと、『あの車で間違いないわね車種とナンバーが一致したわ』と聞こえてきた。


「じゃあ、ドローン回収して戻って来て」


 流石にそこに『ごめんくださーい』って入って行って物事を尋ねたら、素直に教えてくれそうな方々じゃないだろうから戻って来なさいと連絡が入る。


『別に中の奴等、皆殺しにしちゃえばいいんじゃ無いですか?』と天衣は恐ろしい事を言っていたが、説き伏せて帰路に着いた。その時はその判断が正しいと思っていたが保乃先輩の話を聞いた時、その判断は間違っていた事に気付かされた、、。



「あははは、、ウケるー、マジのクズですね。早く殺っちゃいましょうよ」

 天衣は怒りに震えながらそう言った。


「酷い話ね、、働きながら将来歌手になりたいと夢見ていた、いたいけな少女の不安感に付け込んで、薬を覚えさせて、もう買わないと分かったら口封じに殺してしまう」


「サイっテーのクズ野郎だわ」


「まあ薬物の密売なんて何らかの組織が絡んでいるんだろうと思っていたから、対決は避けられないと思っていたししょうがないわね」


 そう言って華鈴は奥から銃を取り出してきた。一酸化炭素は使わないのだろうか?そんな目を向けていると、『部屋一つ一つ密閉するような工作は流石に面倒でしょ』そう言ってきた。


 ちょっと待って!じゃあ、女性数人で組織に挑もうというのだろうか?梨名はすでにサイレンサー付き銃の点検をし始めている。止めるべきかオロオロしていると徐に華鈴が話しかけてきた。


 接近戦で天衣が負けるとは思えないし、向こうが銃を用意してきたらこっちには梨名がいる。梨名は銃の金属音を聞き分け、向こうが銃を準備していると分かった瞬間発砲できる。ただ命中率は悪いから致命傷になっていなかったら後ろからついていって止めを刺してと言ってきた。

 電源を落とし、非常電源もあったらそれも使えないようにする。そうすればカメラに映ることもないし、近くのカメラも調整しておく、そうすれば痕跡は残らないし、通信手段も遮断しておくし、皆殺しにしておけば誰がやったのか分からないから、報復を恐れることもない。


「何か問題ある?」

 と言ってきた。


 止めても無駄のようだ。私も生かしておく価値なんてないと思うし、協力することにした。

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