第三話

「いやー、お腹いっぱい」

「美味しかったですねー」


「まだまだあるわよー、夜はすき焼きにする?」


「しまーーす」

 天衣は無邪気に手を挙げた。


「そんなに?一体どうしたんだよ?」

「どうしたって、臨時収入があったからね」


「臨時収入って?」

 天衣が不思議そうな目を向ける。


「あら言ってなかったっけ?坂口と高畑の隠し口座から3億ほど頂戴したから私達軍資金たっぷりなのよ」

 華鈴はさらりと言った


「えーっ!」

「あのヤロー!私の事利用してどんだけ金儲けしてやがったんだ!」

 梨名はまた怒りが湧き上がってきたのか拳に力を込める。


「まあまあ、あなた達にも分前振り込んでおいたから機嫌直して」

「分前って?」


「一人5千万ずつね」


「えーっ!」

「ご、ご、5千万!?」

 梨名と天衣は顔を見合わせ驚きの表情を浮かべる。


「残りの1億はここの軍資金にしたから」


「梨名さん、ご、5千万ですって、ど、どうします?」

「5千万かぁー、取り敢えず欲しい物も無いし、仕送りかなー」


「仕送りって、実家に?」

 華鈴が不思議そうな目を向ける。


「ほら、施設から逃げ出しちゃったから、強引に連れ戻そうとされたりしたでしょ、ドアとか窓とか補強したり、セキュリティ強化したりしてお金かけさせちゃったからね」


「梨名ちゃん偉い!飛奈お姉さんは感動、さあもっと食べて」

「もう食べれないって、華鈴はどうするんだよ?」


「私はあなたと違って家族の会話とか無かったし、家出同然で出て来たし大丈夫よ」


「そうなのー?きっと心配してるよー、この親不孝もん」


「薬抜かないと帰れないんですよ、きっと」

「そうだね」


「コラー!聞こえてるぞ!」


 私の父親は公安部所属、もしかしたら私達の情報を掴んでいて、私が帰ったら実の父親に逮捕されるなんて事もあり得る。私はもう家には帰れない。でもこの事を口に出すのは止めておくことにした。


「梨名こそ帰ってあげないの?」


「取り敢えず海外に音楽留学しているってことにしてるから、向こうの長期休暇に合わせて帰るかもだけど、今はまだね」


「あーぁいいなー、みんな帰る家があって、私達は無いもんねー、私達は天涯孤独よね」

「そうですね」


「天涯孤独者同士、一緒になろっか?」

「なんか、、嫌な予感するんですけど、、」


「天衣ちゃん、結婚しよ」

「また始まった!同性同士は無理ですよー」


「じゃあ、出来るように政治家脅して法案提出させよう」

 そう言って飛奈は天衣を追いかけ回し出した。


「嫌です。キモいです。私の半径3メートル以内に入って来ないで下さい」


 飛奈だったら本当にやりかねないと思う梨名と華鈴だった。


「天衣はお金、何に使うんだよ」

「私も特に欲しいものとかないからどうしようかなー」


「こーんなに、可愛い顔しているんだから、ドレスアップしてヘアメイクして、ネイルサロンに行ってきなさいよ」

 飛奈はニヤけながら言った。


「私を自分好みにしたいだけですよね?」


「うーん、でもドレスアップってのはいいかも」

 そう言って華鈴はほくそ笑んだ。

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