第21話 大爆発
岡島さん、光牙と共に十分すぎるくらいの椅子、テーブルをドアの前に積み上げると近くの消火器を取り上げる。
監視カメラの位置に注意し岡島さん、光牙の体に隠れるようにしながらロープを固定できる場所を探す。
固定し終えると引き続きこちらの動きを悟られないように岡島さん、光牙に私の動きが監視カメラから映らないようにしてもらい、窓を開けるとそこから中庭へロープを垂らした。
カモフラージュのため他の消火器の近くでも同じような動きをする。それぞれ消火器を手に持ったところで煙の上がっているところに向かって走り出した。
煙が充満し監視カメラから自分達の姿が映らなくなるようなところまで来ると、方向転換し中庭の方へと足を進める。
岡島さんがロープの方へ走り、私は反対側の建物へと走る。
光牙に肩車をしてもらい2階のベランダに登り上がると光牙を引き上げ、光牙にベランダの縁と天井に突っ張っててもらうようにしてもらい、私は光牙の体を伝って3階のベランダへ上り上がった。
そこに岡島さんが到着したのでロープを投げてもらい、3階のベランダの手すりに固定する。
後はタイミングを見計らい滑車を使って2階の窓へ飛び込んでいくだけだ。
光牙と一緒に直ぐにでも飛び込んでいく準備を整えると、バイクのエンジン音が響いてきた。
バイクはそのままバリケードに衝突し、ドア前のバリケードを全て弾き飛ばしていた。
「アイツ等、無茶苦茶しますね!」
一緒に見ていた光牙もこの光景には驚きの声を上げていた。
全くだ。あれだけ積み上げるのに苦労したバリケードを一瞬で弾き飛ばしてしまうなんて!
「光牙、見入ってないで、いつでも行ける準備しときなさい」
「了解です」
「銃の確認も忘れないように」
「了解です」
バイクの運転手、おそらく飛奈だろう。飛奈がゆっくり身を起こそうとしているところへもう一人走り込んできた。冷たい目をした女だ。
そしてもう一人走り込んできた。班長を殺った浅黒の肌をした女だ。
3人は警戒しながらドアを開け中へと入って行く。
「光牙、行くよ。入る時、窓枠に当たって死ぬなよ」
「了解」
滑車を滑らせ一気に中に飛び込み、銃に手をかけた。寸分違わず光牙も飛び込んできた。同じく直ぐに銃を取り出し銃口を敵へと向けた。
私は部屋の中で困惑しているであろう3人に向かって大声を上げた。
状況を説明すれば直ぐに観念して出てくるかと思ったのだが、なかなか出ようとしてこない。
私は焦り出した。有美の話では相当な威力になると聞いていた。
人間なんてバラバラに吹き飛ばされる威力になるかも知れないので、言葉を軟化させ出てくるように促す。
それでも出てくるような様子はなかった。
その時、発砲音が聞こえてきたので私は思わず身を屈めた。
身を屈めた次の瞬間だった。緊迫した空気が広がったと思った後、大きな爆発が起こり、一瞬で辺りは爆煙に包み込まれることとなった。
慌てて身を伏せ爆風をやり過ごす。ものすごい衝撃だった。この距離でこの衝撃となると現場にいた飛奈達はどうなったのだろう?
腕で顔を覆うようにしながら、絶望を感じながらゆっくり立ち上がり爆発のあった方を伺う。
口の中に埃の味と臭いが広がり、むせてしまい気持ち悪くなって、おもわず唾液を吐き出した。
隣にいる光牙もむせて咳き込んでしまっている。
「爆発してしまったみたいですね」
軽く背中を擦ってやるとそう言った。
「バ、バカヤロー、飛奈、飛奈ーーっ!」
怒りが込み上げ、大声を出さずにはいられなかった。
何を考えてこんな行動を起こしたというのだろうか?
何も語らずに死んでしまうなんて絶対に許せない。立ち上がって飛び出していきそうになったのだが、光牙が腰にしがみ付き止めに入って来た。
「崩れてくるかもしれないですから、今行くのは危険です」
分かってる、分かってるけど、、。
「でも、飛奈が、飛奈が、、」
いくら敵になっているとはいえ、幼少期を共に過ごした幼馴染みの死に冷静ではいられなかった。
かなり大きな爆発だった。確かに今行けば二次被害に巻き込まれる可能性は高い。でも、自分ではこの衝動を抑える事は出来なかった。
光牙は私の前に回ると、立ち塞がり爆発現場から引き離そうとした次の瞬間だった。
『バン、バン、バン』と、三発の銃声が響き渡った。次の瞬間、私を押さえ込もうとしていた光牙の力がガクッと抜け、体重を此方に預けてきた。
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ?」
力なくこちらに寄りかかる光牙の体を抱き抱えると、手にぬるっとした感触が広がった。
嫌な予感がし、恐る恐る自分の手を覗き込む。
手は真っ赤に染め上げられ血の臭いが鼻をついてきた。
「な、なに、、何これ!?」
遅れてきた岡島さんが私達に覆い被さるように飛び付いてきて、身を伏せさせる。
その後、自分の体を軸にし回転し転がり壁の方まで私達の体ごと持っていった。
そして、素早い動きで身を起こすと、煙の方に銃口を向け注視しだした。
が、薄れていく爆煙の向こう側には、既に飛奈達の気配は感じられなくなっていた。
「光牙ーっ!光牙ーっ!」
身体中から血が溢れだし辺りが真っ赤に染められていく。
既に動かなくなってしまった光牙を私はただただ抱き締め続けるしかなかった。
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