第10話
小さな手が服越しに胸の上を優しく滑った。
女の子らしい細い指がわたしの僅かな膨らみに何度も沈んでゆく。
布の擦れるような感触に妙な心地悪さを覚えて、身体をよじらせて距離をとろうとするも足の上に股がられて捕まってしまう。
「んッ、ちょ、
「あ、あれ? 本物……? いやそんな筈は……」
「聞こえてない!?」
苦し紛れに呼びかけるも千春ちゃんの耳には届かないようで、小声でよく分からないことを呟いていた。
じたばたと暴れてみるものの、全く振りほどけない。
姉妹でそんなところまで似なくてもいいのに。
「
「本物だよっ!!」
偽物だと思われてたのっ!?
確かに、わたしの胸は平均よりもちょっっっとだけ小さいかもしれないけれど、本物じゃないと思われたのは初めてだ。
というか大きいならともかく、小さくて疑われるなんてありえないだろう。
少しだけショックを受けているところに、ふにふにと追加で何回か揉まれてようやくわたしは解放された。
「……ありがとうございました」
「ど、どういたしまして」
お礼を言われると返したくなるのが人間の
「……じゃなくて、何でこんなことしたの!?」
わたしは完全に被害者だし、これくらい聞く権利ははずだ。
ただ、小さすぎて男だと思ったとか言われた日には、もう立ち直れなくなってしまうから止めてほしい。
「それには深い事情がありまして……。そうだ、百島さんもお返しにあたしのおっぱい揉みます?」
「えっ」
つい、視線が胸の方に向いてしまう。
千春ちゃんのは中学生にしては結構サイズ感がある。触ってみたいかと聞かれたら、正直なところ触ってみたい。
決して変な下心は無いけどね!?
「いいの?」
「同性って分かりましたし。別にいいですよ」
「……じゃあ、折角だし」
こういう時は何か言ってから触った方がいいのだろうか。
「失礼します」は千春ちゃんのパクリで先輩としての僅かな
「いただきます」はシンプルに犯罪感が凄い。女の子同士でも捕まるレベルの気持ち悪さだ。
「あの……じっと見られると流石に恥ずかしいんですけど……」
「ご、ごめん! えっと、百島
怯えながらも、わたしの手はゆっくり千春ちゃんに近づいていき。
「――どこへ行くのかしら?」
触れる直前で止まった。
振り返ると、そこにはお皿を持った
玲香ちゃんからすると、わたしが一方的にかわいい妹の胸を揉もうとしている変態に見えるかもしれない。
ちなみに玲香ちゃんはスタイリッシュな私服の上から、かわいらしいエプロンを着ていて普段とはまた違う良さがある。
こんな子に料理を作ってもらったら、男子はイチコロだろう。
……わたしは今、まさに
「……千春。先に食べてなさい」
「待ってお姉ちゃん。百島さんは――」
「……私は百島と部屋でお話して来るわ。……さあ、こっちよ」
終わった。
手を引かれながら魂が抜けた心持でフラフラと歩く。
気の毒そうな千春ちゃんがジェスチャーで謝っているのが見えた。
恐らく行き先は玲香ちゃんが趣味で使っている(であろう)拷問部屋。
そこで、ひき肉にされて昼食として
「……ここが私の部屋よ。入りなさい」
案内されたのは『れいか』と書かれたネームプレートが掛けられている部屋。
ドアを開けた先もとりあえず電気椅子や拷問道具は見当たらない。
ベッド、勉強机、小さな本棚があるだけの、なんとも生活感のない部屋だ。
一安心……と思いきや玲香ちゃんが部屋の鍵を閉めた。
え……? やっぱり拷問される?
先に玲香ちゃんがベッドに腰掛ける。
合わせてわたしも床に正座をした。
冷たいフローリングが、わたしの緊張感を増幅させる。
「玲香ちゃん。虫がいい話なのは分かってるんだけど、命だけは……」
恋人補正で何とか許してもらえないかと、命乞いをしてみる。
「……何を心配しているのか知らないけれど、謝るのは私の方よ」
「へっ?」
まさかの言葉にパッと顔を上げる。
謝られることは何もないと思うけれど。
「……おかしいとは思っていたの。積極的なあなたが……何もしてこないなんて」
話の
玲香ちゃんがエプロンを外す。
「……私ならば、妹よりあなたを満足させられる自信があるわ」
「玲香ちゃん? 何か勘違いしてない!?」
玲香ちゃんが今度は自身の服に手をかける。
慌てて目を手で覆うけれど、指の隙間から細いお腹が見えた。
「さあ……好きに触りなさい」
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