第63話 猫の魔法使い

「ファイアボール……マキシマム!!」


 突然、そんな声が聞こえ……獄炎がスライムを覆った。

 そして……スライムたちは……綺麗さっぱり消えていた。

 チャラい集団は……呆然としていた。

 私もあまりのことに、ただ見ていることしたできなかった。


「みなさん! 無事ですか!?」


 茂みの奥から、先程と同じ声が聞こえる。

 ……この声、まさか。


「あ、あんたは……さっきの……」

「人間さんたち! 無事ですか!?」

「あ、あぁ……俺らは……大丈夫」


 やっぱり……さっきの猫獣人だ。

 さっきの呪文も……この人が? よく見ると、片手に指揮棒のようなものを所持していた。

 私が動揺していると、いつの間にかスライムの集団が森の奥から再び出現した。


「来たか、スライム! こんな私のために食べ物を恵んでくださった人たちを……死なせるわけにはいきません!!」

「あ、あんた……」

「かかってこい! マグマストーム!!」


 猫獣人が呪文を唱えると、杖の先からマグマのような炎の光線を放った。

 光線によって、スライムの集団は一掃されているように見えた……が。


「あぁ……しまった……」


 完全に始末できたわけではなく、一部が取り残されていた。

 残った集団が、彼らに向かって近づいていく。


「ど、どうしよう……私……魔力が……」


 スライムの一匹が猫獣人に襲い掛かろうとしている!

 い、いけない! つい見とれてしまっていた!

 私も行こう! 私は茂みから飛び出し、刀でスライムを切り裂いた。


「あ、貴方は?」

「……通りすがりの探索者ってところかな?」

「と、通りすがり?」


 おっと、つい好きな作品の決め台詞を……。

 私は残ったスライム集団を切り裂き、奴らを一網打尽にした。


「す、すげぇ……」


 集団の中の一人が私に対してそう評する。

 ……何とも言えないな、こんな奴に褒められるなんてね。


「……ま、とりあえず、この人たちを安全地帯に連れて行こう!」

「はい!」


 私はチャラい集団の奴らの襟元を掴み、立ち上がらせた。


「よし! それじゃ、行くよ!」

「お、おい! あんたいきなりなんだよ!?」

「うるさい! ついてきて!」

「は、はひ!?」


 私は集団を連れて、安全地帯へと走った。

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