第64話 猫と交流
「はぁ……はぁ……ここが安全……地帯?」
「はい、ここがそうです……あの、大丈夫ですか?」
「へ、平気……」
ダメだな私……やっぱり体力はまだからっきしだ……。
キセノンの言う通り、鍛えないと……。
私はそのまま、変身を解除した。
「えぇ!? 人間!?」
「な、なに!? きも!」
変身を解除した私に向かって、チャラい集団が三者三様の叫びをあげる。
うん、色んな声があるが、キモくはない、決して!
「に、人間さん! 貴方、凄いですね!」
猫獣人が、私に対して称賛の声を上げる。
うん、やっぱりベテランであろうサンルートの人に褒められると、すごく嬉しい。
「貴方も、まさかあんなにすごい魔法を放てるなんてね」
「ありがとうございます! 私、普段は探索者として活動していたのですが……突然変な土地に来て、探索者ギルドも無くなってて……」
「……なるほどね」
この人も探索者か、通りで私と違って息切れしていないわけだ。
まだまだ余裕そうに思える。
「貴方、名前は? 私は瑠璃、猪飼瑠璃」
「瑠璃さんですか! 私はアリスって言います! よろしくお願いします……えっと、サンルートの人ですか?」
「いいえ、私は日本人」
「に、にほんじん?」
「あぁ、えぇーっとね……」
私は猫獣人……アリスさんに、サンルートと日本について何があったのかを説明した。
「……てなわけで、まだ推測の域でしかないけど、日本とサンルートが融合したみたいなの」
「な、なるほど……そんなことが……」
アリスさんは納得したのか、手を叩いて納得した。
「あ、あんたらなんなんだ……俺らをどうする気だよ!?」
集団はあまりの出来事に混乱しているようだった。
はぁ……まったく、どうするもこうするも、貴方たちを助けたでしょ?
そんなことを言おうとしたとき、アリスさんが集団の中の一人である男に近づいて……手のひらを掴んだ。
「先ほどはありがとうございました!」
「は? え?」
「私、ずーっと何も食べてなくて……貴方がくれた食事、とっても美味でした! おかげでもう元気ハツラツです! 本当にありがとうございました!」
「あ、お、おう……」
男は照れているのか、頬を指でかいた。
アリスさん……馬鹿にされていたのに、全然気にしてないどころか、むしろ感謝しているようだった。
……うん、教えない方がいいな、これは。
「ねぇ、タツヤは? タツヤはどこに行ったの!? 教えてよ!」
「お、落ち着け! タツヤは……もういねぇ……見ただろ?」
「そんな……噓でしょ!?」
……集団の1人の女が、消えた仲間について話していた。
もういない……ということは。
……考えたくないな、私は思わず下を向いた。
さっきはざまぁみろとか思ってたけど、いざ本当にそうなると……自分の力不足が浮き彫りになる。
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