第6話 異世界人との遭遇

 私はできる……できるぞ! 私は猪飼瑠璃だ!


「お、おりゃああああ!!」


 私は怪物に向かって走り出した。

 大声に気づいたのか、全員私に注目している。

 私は一人にターゲットを向ける。

 そこで私は様々な感情を駆け巡った。


 血とか出るのかな? もしも刺したら……私がこの生物の命を奪ったってことだよね? これって……殺人にならない? そもそも翡翠ちゃんを守るためとはいえ、こんなことをするのは正しいのか?


 だがもう起こした行動は戻すことができない、仕方がない……なるようになれ!

 私は目を閉じ、カッターを持っている腕を前に出す。

 腕が途中で止まり、刺さったのか確認するべく、ゆっくりと目を開ける。

 や、やっちゃったのかな……私。

 目線から見えたのは……。


「あ……あぁ……」


 カッターは……かすり傷を負わせるまでもなく、通り過ぎていた。

 私の腕が痙攣し、恐怖のあまり、足が震える。

 怪物はにやけ顔を浮かべ、片腕を上げ、こちらに攻撃を仕掛けようとしている。

 まずい……死ぬ!

 でも……ここで私がやられれば、翡翠ちゃんが逃げられる余裕ができるかもしれない……それなら……やられた方が……。

 痛いのだろうか? 苦しいのだろうか? それともそんな事を感じることなく死ぬのだろうか?

 そんな事を考えながら、私は目を閉じた……。


「……」


 痛……くない? 苦しくもない……まさか私は……死んだのか?

 うっすらと目を開ける……すると、怪物の頭に一本の矢が刺さっていた。

 しばらくすると怪物は……煙になって消えた。


「ひ、ひいいいいいい!?」


 私は思わず後ずさりをしてしまった。

 な、なんなんだ!? いつのまに矢が……。


「どりゃああああああ!!」


 私が困惑していると、小柄で髭面、そして金色に輝く髪の男性が、巨大な斧を振り回して、怪物と戦っていた。

 ていうかあれ小柄ってレベルじゃなくない!? 小学校低学年ぐらい……翡翠ちゃんぐらいの身長しかなくない!?


「おい! こんな所で何やってんだ!」

「は、はい!?」


 小柄の男性が、戦いながら私に声を掛ける。

 何やってるのか聞きたいのはこっちなんだけど!?

 そんな事を考えていると、違う所でも、何やら鈍い音が聞こえていた。


「フッ! ハッ! そこの人間! 何故逃げへんのや! さっさと離れな!」


 鈍い音の方に目をやると、私よりも数十センチくらい背の高そうな女性が、扇子を二枚持って、怪物と戦っていた。

 服の露出度高!? なんで関西弁……というか京都弁みたいな口調!? というかあの人……角生えてない!?

 ていうかこっちに怪物来てる! な、なんとかしないと……。


「……危ない」


 私が逃げようとしたところ、そんな声が聞こえ、何かが飛んできた……。

 その何かが怪物に攻撃を与え……怪物は……消滅した。


「……大丈夫?」

「あ、えっと……はい」


 飛んで来た者の正体は、背中からコウモリの翼を生やした青髪の女の子だった。

 目が赤い!? しかも牙生えてない!?

 しばらく3人が戦う様子を、私は黙って見ていた。

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