第4話 魔法陣
……謎の猫に助けられた私は、下宿先の駄菓子屋に一旦戻ろうと走り出す。
叔母さんは無事なのだろうか? 携帯を見ても、何の連絡も無い。
……とにかく早く戻らないと!
「ママ……どこ?」
私が駄菓子屋に向かって走っていると、女の子の声が聞こえてきた。
その声に私は聞き覚えがあった。
「
「る、るり姉……」
いつも駄菓子屋に来てくれる女の子だった。
「お母さんは? どこにいるの?」
「ママ……今日……仕事なの……友達と……遊んで……帰ろうとしたら……地震が起きて……私……怖い……」
「大丈夫、大丈夫だよ!
翡翠ちゃんは泣きながら何があったか言ってくれた。
私は彼女をやさしく包み込み、落ち着くように促す。
「とりあえず、お母さんに連絡するために、一旦駄菓子屋まで行こうか、ね?」
「うん……」
もしかしたら、そのうち避難指示が出るかもしれない。
それまでの間、駄菓子屋に預かっておこう。
しかし……なんなんだ? あの怪物にあの建物、それにおかしな猫……。
「るり姉、どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
……いけない、今翡翠ちゃんを不安にさせたらダメだ。
でも、意味不明な事が起こりすぎて、頭が混乱してる……。
私が困惑していると、突如、私たちの足元を円状の何かが覆った。
「な、なんだ!?」
「な、なに……?」
突然の出来事に私たちはさらに困惑する。
この円状のもの……まさか……異世界小説でよく見る……。
「……魔法陣?」
……そんなことを口にしたのも束の間。
私たちの目線は真っ白に包まれ……意識を失った。
☆
「……え! ……ねえ! ……り姉! ……るり姉!」
「……は!?」
目が覚めると、翡翠ちゃんが必死の表情で私の体を揺らしていた。
「こ、ここは……?」
辺りを見渡すと、黒い岩肌に囲まれた空間にいた。
洞窟だろうか? 鍾乳洞だろうか? とにかく、先ほどの道端ではないことは分かる。
「ねぇ……るり姉……ここ……どこ……? 私……怖いよぉ……」
翡翠ちゃんは起き上がった私の腕を掴んで覚えている。
……正直、私も怖い。
だが、大人である私が怖がっていては、余計にこの子を怖がらせてしまう。
ここは冷静になろう。
「……大丈夫だよ。お姉ちゃんと一緒に外に出よう! ママも途中で待っているかもしれないし!」
「ほ、本当かなぁ?」
「大丈夫! 私は異世界を冒険してきたんだよ? このくらい行けるよ! だからさ……お姉ちゃんと一緒に頑張ろう?」
「……うん! わかった!」
ふぅ……とりあえず翡翠ちゃんを安心させることはできた。
とりあえず立ち止まっても仕方がない、歩かなければ。
だが……どっち側に出口があるのだろう?
「とりあえず……携帯は繋がるのかな?」
携帯を起動してみた……が、想像通り圏外……。
「ねぇ、るり姉、どっちに進む?」
翡翠ちゃんが私の手を引っ張って、急かしてくる。
うーん、行き止まりでも、進まないよりかはマシか!
「翡翠ちゃん、こっち! こっち行こうか!」
「……うん!」
私は翡翠ちゃんの手をしっかり掴み、歩き始めた。
でも、ただ歩き続けると、翡翠ちゃん飽きちゃうかな……そうだ!
「翡翠ちゃん、ただ歩くのもなんだし、最近冒険した猫の世界のお話、聞かせてあげようか?」
「うん! 聞きたい!」
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