第3話 ダンジョン出現

『地震です! 地震です!』


 ……その音声の後、地面が縦の方向に揺れ始めた。


「何!? 何!?」


 私は動揺を隠せず、その場でしゃがんだ。

 このレベルの地震は久々だ……周りには高い建物が結構ある、この場は危険だ。

 私は周りを見渡し、安全なところがないかを確認する。


「……あそこなら」


 私は周りに警戒しながら、広めの公園へ駆け込んだ。

 同じ考えの人がいたのか、皆そこに集合している。

 私たちは真ん中に集合し、揺れが収まるまで頭を抱えてしゃがんでいた。


 ……しばらくして、揺れが収まった。

 幸い、大きいとは言っても、震災レベルではなかったようだった。

 皆、安堵のため息を上げ、立ち上がった……その時だった。


「お、おい! なんだありゃ!?」


 男性が向こう側を指差してそう叫んだ。

 ふとその方向を見ると、何やら巨大な塔のようなものができていた。

 生半可な大きさではない、雲にも届くような大きさだった。

 私たちは同様のあまり、それを見続けるしかできなかった。

 ……そんな中。


「キャアアアア!! な、なにあれ!?」


 女性が叫び声を上げ、塔の下の方を指差す。

 そこを見てみると……緑色の二足歩行の生物がいた。

 あんな動物……見たことが無い、少なくとも私の見識の中では。

 動物は私たちに向かって牙をむき、走り出す。

 身の危険を感じた私たちは背を向けて逃げ出そうとした……その時。


「ファイアボール!」


 遠くからそんな声が聞こえ、ふと動物の方を見ると……動物は火だるまになり……消滅した。

 皆が逃げる中、私は立ち止まって、その様子を凝視していた。


「おーい! そこの人! 大丈夫か!?」


 突然、私を呼び掛ける声が聞こえる。

 ふとその方向を見ると、「とんがり帽子にマントを身に着けた二足歩行の猫」がこちらに向かって声を掛けるのが分かった。


「な、何!? ね、猫!?」


 意味不明な事の連続に、私は混乱してしまった。


「ここがどこなのかいまいちわかんないけど……モンスターを倒すのが俺っちの役目! そこの平たい顔の人間! 早く逃げな!」

「ひ、平たい顔!?」


 そういう貴方は顔が猫なんですけど!? と言いたいところだったが、ここは言う通りにした。


「おっしゃあ! ゴブリンども! 俺っちが相手だ!」


 公園に背を向けて逃げる中、そんな声が響いた。

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