第27話 孤児院魔術士、報告する×2
一番席次ミストウルフ ミスル
二番席次ドラニユート ドラ
三番席次鬼人 ミケ
四番席次シーカー シカ
五番席次アドゥムブラリ アド
六番席次ジェネラルオーク ジェネ
七番席次ミストマウンテンタートル ミスマ
八番席次トレント トト
とまぁこんな感じで名前とマナを与えておいた。
さて、まずはここをどのようにしてギルドに報告するかだ。
この村? を伝えてしまったら国に敵対意識を持たれていると勘違いされかねない。
「モンスターの王、なんか魔王みたい」
ハザールさんに相談したいけど、なんかミケと戦っている。
リーダーのモンスターで唯一女性のミケであり、刀を使っている所が共通している。
純粋な身体能力ではミケが圧倒的なのだが、技術で圧倒されていた。
ウルは獣人の姿で私の膝に頭を置いてゴロゴロしている。
「ウル。ここの森についてどれだけ調べてある?」
「そうですね。吾輩がここら一帯を占めてから、森は大まかに三分裂しました」
「三分裂?」
「はい。派閥、と言った方が良いでしょうか。我々特に系統が決まってない集まりの自由派閥、鳥系モンスターが集まっている鳥類派閥、虫系モンスターが集まっている虫類派閥です」
どこの社会にも派閥争いってのはあるのかね〜。
「でも、中心にめっちゃ強い、この森の主っぽい奴居るけど?」
「あー
「へ〜知ってるの?」
にしてもその名前、伝説のドラゴンの一体じゃないか。
物語でしか知らないけど、まさかね。
「はい。会いに行きました。不干渉って感じで、敵対しなければ特に問題ないらしいです。ちなみに本人からその種族名は言われました」
「⋯⋯お前、凄い度胸あるな」
「わフフ。嬉しぃ」
「で、もう少し派閥について聞かせて」
「はい」
現在はその三つの派閥があるが、それが顕著に成ったのはウルが来て群れが出来てかららしい。
迫って来るモンスターを返り討ちにしていたら群れが出来ていたらしい。
言われてウルを龍眼を観察したら、Aランクの中でも相当な実力があるレベルになっていた。
私が与えたマナによる変化とマナが満ちているこの空間での修練の賜物だろう。
現在はこの森を誰が表立って支配するかでの派閥争いが起こっているらしい。
霧の古龍はこの争いには不干渉であり中立、なので森の中心部以外が争いの対象らしい。
ついでに王として君臨したいモンスターが躍起になっているとか。
「興味無いんですけどね。まぁ、皆なんかやる気ですけど」
「ウルは興味無いの?」
「ないですね。吾輩は主様の為に強くなる事が一番大切ですから。まぁ、降りかかる火の粉は払いますが」
「そう」
長居しても悪いので私は帰る事にする。
寂しそうにするウルに「これからも頑張って」と伝えて、ハザールさんと戻る。
今回の報告に私達は『問題無し』と答えるつもりだ。
濃い霧の中でこの村を探し出す事は難しい。
道が出来ているのなら問題ないと思われるかもしれないが、それが一種のトラップとなっていた。
かなり複雑に入り組んでおり、直線的に歩いていても迷ってしまう。
故に、見つからないと判断した。
いつかはちゃんと世間に言わないといけないと思うが、今は問題ないだろう。
寧ろ伝えて、私に疑いの目が向けられても困る。
特にそれが家族達に降りかかるのが嫌だ。
それから三時間、全ての冒険者がギルド長に報告を終えた。
誰もが異種族で群れを成すモンスターを見つける事が出来なかった。
私もウル達に、別の種族同士での行動は控えるように伝えてあるので、いずれは自然消滅するだろう。
ただ、問題が一つだけ浮上した。
それが私の元パーティ、ヌードザモンキーが名前を持つモンスターと接触したらしいのだ。
灰色の髪をポニーテールで結んでいて、刀を扱う鬼人。
それは確実にミケだった。ハザールさんもそれは気づいている。
私達が解散した後に接触したらしい。
三時間の間でそれが出来るとは⋯⋯運が良いのか悪いのか。
その報告を集中して聞いていると、人語を喋れる程に知性が高いモンスターだと言う事。
それよりも驚愕した事に、昆虫系のモンスターに襲われていた所を助けて貰ったらしい。
そのような報告をしていた。
具体的な事は分からないけど、ミケがあいつらを助けたと言う事実はあるようだ。
モンスター同士の縄張り争いは良くある事で、そこは問題視されなかった。
されたのは、モンスターが人間を助けたと言う事実。
この情報はギルドで一度持ち帰るらしい。今日はこれにて、依頼完遂となる。
めぼしい情報を得たのは落ちぶれだと言われていたヌードザモンキーだけだった事により、他の冒険者達が少しだけ睨んでいた。
煽っていた相手が手柄を上げるのがそこまで不服なのかね。
私が帰った時には既に夜である。
晩御飯の時間もとっくに過ぎているのだが、ギルドに帰った後の手続きとかもあり、直帰は出来なかった。
転移魔術も使える状況ではなかったしね。
「ただいま〜」
「おかえりアメリア。遅かったね。大丈夫だった?」
「うん。特に依頼とかは問題ないよ。ほれ、金貨10枚」
「おぉ。明日はちょっぴり良いご飯になりそうね」
「それは楽しみ」
子供達は皆寝たようであり、起きているのはルアとシャルだけだった。
子供達は起きて待っていると言ってくれたらしが、さすがに起きれなかった様子。
翌朝、私はシャルには渡さなかった金貨10枚を使って良いワインを樽ごと三つ購入した。
中々の出費だぜ。
その後、それを持ってファフニールのダンジョンに移動して来た。
今日はエルフの里での情報などを伝えに来たのだ。
龍眼が使えなかったので何も知らないと思うしな。
「モンスターが見当たらないな。冒険者が攻略しに来たのかな。ファフニール、殺して無いと良いけど、それは高望みか」
ファフニールの部屋まで到着すると、金属がぶつかり合う様な音が聞こえる。
まさかの戦闘中だ。
私はゆっくりと扉を開けた。ファフニールが負けるとは思わないけど、一体誰が戦っているんだ?
ファフニールのマナが大き過ぎて、相手のマナが分からない。
「え」
なんと、そこで戦っていたのはルルーシュ達だった。
ルルーシュしか私は知らないのだが、服装を合わさているお陰で仲間だとは分かる。
ルルーシュ達は全力で戦っているのだが、ファフニールはあまり力を出していないように感じる。
「なに!」
しかも、近くではお茶をしている人達も居るでは無いか!
何だこのカオスな状況は。
『む? 貴様ら止まれ。客人だ』
「えっと、コレは一体何事?」
私が中には入ると、今まで戦っていた人達やお茶をしていた人達が膝を折った。
うん。
モンスター達にも思ったけどさ、私別に何もしてないからね?
だと言うのにこんなに敬う態度を取られても困る。
「本当に何これ?」
「はい。それは僕から説明致します」
なんでも、私が与えたマナから近いマナをルルーシュが感じ取ったらしい。
そこでファフニールと出会い、ファフニールもルルーシュの中にある私が与えたマナの存在に気づいた。
ここを拠点として使わせて貰いながら、ファフニールからの訓練が受けられるようになったと。
仲間が増えた事により、調査部隊、訓練部隊の二部隊に別れて繰り返しているらしい。
ファフニールが鍛えているので、ルルーシュの仲間達はかなりの実力者揃いに成ったらしい。
流石にマナを与えたら身が持たないとの事で、ファフニールから直接マナを与えられた人は居ないらしいけど。
「良くそれを了承したな」
『暇だったのでな。ついでにどこまで出来るのか試したく成った。それで、主は何用だ』
「暇で人間を魔改造するんか。えっと、まずはコレを。口にあうか分からないけど」
ワインを与えた。
「それと、実は精霊神に会ってきてね。有益ではないけど、少しばかり情報貰ったらその共有をね」
『成程。神の前では眼も使いにくいか。よかろう。聞こうでは無いか』
ワインの評価は中々に良く、ルルーシュ達に定期的に持ってこさせるように命令していた。
まぁ、知識を貰いながら訓練もしてくれているので、それぐらいは当たり前かもしれないが。
エルフ里での情報を与えると、ファフニールは考え込んだ。
『ふむ。神の領域に行ける事は確かだな。おすすめはされないだけで』
「そそ。まぁあ、それが皆目見当もつかない状況だけどね」
『主に無くて、神にあるもの』
「そんなの⋯⋯」
「『全部じゃん(だな)』」
道はまだまだ長いか。
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