告白を断ったら天災級ダンジョンの奥地で放置されたけど、元龍王候補の力を得たので神を越える力を研究したいと思います〜復讐とかざまぁとか考えてないので関わらないで!〜
第26話 孤児院魔術士、霧の森にて再会する
第26話 孤児院魔術士、霧の森にて再会する
そこそこ潜って来たと思うけど、現状何かがある訳ではなかった。
設定した位置に針が向くコンパスを所持しているので迷う事はないだろう。
「群れを成しているのはあまり見当たらないね」
「だね。どんどん強いマナの方に近寄っているから、あまり奥には行きたくないんだけど⋯⋯モンスターが一体も見たら無いのは変だよね」
どこかで隠れているのが正しいと考えるべきか。
ワーウルフを呼んだら一瞬で分かるかもしれないけど、ハザールさんが居るのでそれも難しいな。
さて、どうしたものか。
戦闘音も聞こえないからどこかでバトルが始まっている訳でもない。
特に問題もなく各々調査を行っているのだろう。
「森にしては歩きやすいよねここ」
ハザールさんの言葉を聞いて私は地面を見た。
確かに、獣道にしては整いすぎている気がする。
木の根っこが切られて、転けないような親切設計だ。
「開拓されてるのか? モンスターが? いや、まさかな」
「これは本当に何かあるね。もしかしたらトップは人間かもしれないよ」
「そうなると、かなり危ないね。使役者が霧の森のモンスターを
しかも霧の森は冒険者が近寄らない場所である。
それを意味する事は、モンスターが放置されていると言う事。
長い間生きていたモンスターは賢く強力になる。
そのようなモンスターを沢山使役した場合、それは国と戦争が出来る程の力となる。
「まぁでもそれは無いかな」
「え、なんで? こんな人が通りやすい道を作っておいて」
「この霧はモンスターが発生させている。しかもめっちゃくちゃ強い化け物がね。そんな奴の領域で侵略行為は出来ない」
「え? そうなの? 自分はそんなの感じないけど」
「そうなの? ハザールさんはマナに敏感でも、そこまで広範囲は察知出来ないのかもしれないね」
或いは私がそこまで感知出来る力を持っているだけか。
そんな真偽はどうでも良い。
重要なのは、どうして誰がこのように道を整備しているかだ。
一直線だから進みやすいけどね。
「特に木々には何も無いね」
根っこを切られただけで木には異常がない。
本当に道だけか?
「アメリア。そうでも無いっぽいよ」
「え?」
木の上に跳び乗っているハザールさんが言葉を出した。
私はハザールさんの横に跳躍して向かった。
木の枝には擦ったような跡がある。
これは木の枝と枝をジャンプで移動した時に出来る跡だ。しかも、からりの脚力で。
「ふむ。道を整備しておきながら木々の移動を使うのか」
再び地面に降りて移動を再開する。
近くに冒険者の気配は無い。
と言うか、この霧がマナの塊のようなモノなので、気配が分かりずらい。
ここはもう、純粋な気配を察知出来るハザールさんに索敵は任せるしかない。
「む? 右側から何か来るぞ!」
「右!」
同時に同じ方向を向いて臨戦態勢に入る。
術式の構築を始める。
集中してマナを探ると、六体程のマナを感知出来た。
「⋯⋯あれ?」
私は術式を解除した。
その行為にハザールさんが驚愕するが、気にする余裕が無い。
相手のマナの性質が私に近い。
それが意味する事はただ一つ。
ウルフ達だ。
一体だけそれが大きいから、ワーウルフなのは間違いない。
「大丈夫だ。彼らは敵じゃない」
「主様ああああ!」
獣人姿のワーウルフが飛び出てきて、私にしがみついた。
久しぶりに会ったせいか、尻尾を激しく揺らしている。
耳もピコピコ動いている。
「じ、獣人!」
「あー違くて、この子はワーウルフだよ」
「え、えでも」
ハザールさんの戸惑いは分からないでもない。
見た目は完全に獣人だと言うのに、ワーウルフと言われても信じ難いだろう。
しかもこんなに人間っぽく柔らかな笑みを浮かべて、嬉しそうにしているのだから尚更だ。人語も話すしね。
後ろに続いていたのは猲狙のダンジョンで洗脳したウルフ達だ。
少しだけ見た目が違うので、この環境に適応しながら進化したモノだと思われる。
「主様と別れてから、吾輩、剣の鍛錬を一日も欠かした事はございません!」
「なんか喋り方が柔らかくなったな。一人称も変わってるし」
放置してしまったせいか、ベッタリとくっついて来る。
ハザールさんに一応事情を話す事にした。
「なるほどね。魔術以外にも手を出していたのか」
「まぁね。あーワーウルフって呼びにくいし名前決めようかな」
「名前を頂けるのですか!」
「まぁ、その方がわかりやすいし」
ワーウルフなのでウルとでもしておこう。
「君はウルだ」
「ありがとうございます主様! あ、主様。実は剣の腕を磨いている途中で我が軍門に下った輩がおります。是非ともご紹介致したく」
「おぉそうか。呼ぶか、案内するか、どっち?」
「何しろ数が居ります故、足を運んで頂けるとありがたいです」
「うん。良いよ」
「ありがとうございます。そちらの剣士も来るが良い。主様の仲間なら歓迎するよ」
ワーウルフ改めてウルが案内してくれる場所まで歩く事にした。
整備した道はウル達が行ったことらしい。
ハザールさんが耳打ちして来る。
「話題のモンスター達って、この子達じゃないの?」
「それは無いと思うよ。ウルフ系統なら分かるけど、今回の内容は種族問わずだ。だから無い」
「ん〜。でも人間の言葉とか平気で話す程の知性がありながら、自分が見る限り相当な猛者だから実力者、従っているウルフを見る限りリーダーシップも存在する。条件は良いと思うけどなぁ」
「考える過ぎですよ。ウルは元ダンジョンボスですからね」
そして案内された場所はそこそこ奥に存在する集落だった。
私が知識も横流ししたせいか、まともな家が建っていた。
このさらに奥、森の中央にどデカいマナを感じる。
そこには近寄って居ないようだ。
「いずれ戦ってみたいな。霧の主」
霧の森の主、略して霧の主と呼ぶ事にした。
この霧が覆っている森はかなりの広さがある。
だから森全部が霧の主の縄張りだと思うのだが、こんなところで村のような場所を作っても問題ないのだろうか。
と言うか、二階建ても存在するけどウルフ達に必要かな?
「それでは失礼」
ウルがワーウルフの姿になっていく。
「本当だった」
「でしょ?」
口にマナを溜める。
これは咆哮だな。
ハザールさんに視線で合図して耳を塞ぐ。
『ワオオオオオオオオオオオオオ!』
森全体に響くかと思われる程に大声量。
腹にのしかかる振動がその大きさを物語っている。
指で塞いでいるだけでは抑えられないので、ハザールさんと一緒に結果で守る事にした。
咆哮が収まり、ウルが獣人の姿に戻る。
「主様、あそこでお待ちください」
案内された場所は玉座⋯⋯っぽい場所だった。
この森で生息しているモンスターかアニマルか、多分モンスターだとは思う。
それらの骨と毛皮で作られた玉座。
正直、不気味過ぎて座りたくないと言うか触りたくない。
「ほらほら、主様なんだから座らないと」
「ハザールさん面白がってますよね」
「そんな事ないですよ」
「目を見て話しましょうか」
「ヒューヒュー」
吹けてない口笛で誤魔化せると思っているのか。
まぁ、茶化されるくらいには仲良くなったと言う事だね。
一緒に食卓を囲んだのだ。これくらい距離感は近くても問題ないだろう。
⋯⋯そう言えば、元パーティメンバーとは野営や遠出以外で一緒に食事をする事はなかったな。
食べ終わったら自分はすぐに解散してたし⋯⋯それも良くなかったのかな。
「そろそろ来ます」
結局玉座には座らずに階段に座っている。
森からぞろぞろとこの村に向かってモンスターが来るのが分かる。
その数⋯⋯分からない。
「ハザールさんやばいよ」
「ん?」
「数が分からない」
霧のせいもあるのだが、それだけ数が多くて密集しているので具体的に分からない。
出て来たのは、ウルフの群れ、リザードマンの群れ、シーカーの群れ、アドゥムブラリの群れ、オーガの群れ、オークの群れ、タートルの群れ、トレントの群れである。
「あ、あぁ」
「アメリア、やっぱりこれが依頼の発端だよね」
群れのリーダーと思われる存在は一段階進化をしている種族な感じがする。
その群れにも数名、リーダーと同じ種族はいるのだが、やはり力が劣っていると見るべきか。
リーダーが前に出て来る。
『お初にお目にかかります。主神様』
「マナで声を出しているのか。器用な事をするな。後、主神?」
「はい! 皆、吾輩を長として来るのですが、主様が居るのでそれは出来ないと言ったのです。でも、聞かないので、吾輩から見た主様を率直に伝えたところ、こうなりました」
うん、分かんね。
そして順番に前に出て、膝を追った。
四足歩行のモンスターは伏せているけど。
『一番席次、ミストウルフ族リーダー、以後お見知り置きを』
「二番席次、リザードマンを率いるドラゴニュート。覚えておいてください!」
「アタシは三番席次、オーガを率いる鬼人っす、如何なるご命令もお聞きするっす!」
「四番席次、シーカー族のリーダー、よろしくお願いします」
「五番席次、
「六番席次、オークを率いる、ジェネラルオーク。この命、貴女様の為に」
『七番席次、マウンテンタートルを率いる、ミストマウンテンタートルなり。よろしゅう』
『八番席次、トレント族です』
各々の自己紹介をしてくれたのだろう。
名前がないので凄く分かりにくいし覚えにくい。
適当に名前を与えても良いのだろうか?
そもそも私は彼らに何かを施した事はない。
ウルのお陰? せい? で凄く信頼されているけど、そんな大層な存在じゃない。
「アメリア、どうするの?」
「どうしようね、コレ」
ウル、一ヶ月そこらで何をやったんだ。
まぁでも、これはこれで面白そうと言うか研究に使えるかもしれない。
ウルみたいにマナを与えれば何かが起こるかもしれない。
マナを与えれば名前を与えても許してくれるかな?
「⋯⋯ふむ。リーダー格はBランクのモンスターだけど、ウルと同程度のマナは与えられなさそうかな」
ダンジョンマスターに成ったウルは何年生きたか分からない。
ただ、私が龍眼を使って全員見た感じ、マナを注ぐための器がウルよりも小さいと分かった。
私は三年間、生きる為に必死に成ったお陰で、ファフニールのマナの三分の一を受け入れるだけの器が出来ていたと言う訳だ。
「器の三分の二が一番適応しやすいか。⋯⋯とりあえずリーダーらしい君達にはマナを与える。その代わりに名前も付けるけど、良いかな?」
皆さん嬉しそうな眼差しを向けて来るな。
モンスターに取ってマナを与えられるのって結構嬉しい事なのかな?
モンスター社会は分からないや。
「自分は報告書まとめておくね。ここは安全っぽいし」
「ありがとうございます」
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